彼女と共に

 言ってしまった。

 突然何を口走ってるんだ僕は。これじゃあただの不審者じゃないか

 しかしそんなことを考えていた僕に帰ってきたのは思いもよらない返事だった。

 彼女は倒れた体を起こして

「良いですよ。」と言った。

 僕は一瞬理解が追い付かなくなる

「今、なんて....」と僕が聞きかえすと再度彼女は

「良いですよ。」と答える

「それじゃあ....」と言って彼女は僕の方に手を伸ばして

「それじゃあ行きましょう?遠い遠い場所へ」

 僕はゆっくりと、ゆっくりと手を伸ばす

 月を背にまるで天使のような微笑みを浮かべる彼女に向かって。


 そして彼女の手に触れた

 彼女の手には肉はなくまるで骨の上に直接皮があるような手触りだ

 しかしそんなことも気に留めず僕は彼女の手を引く

 行く当てもないまま歩き出す

 彼女と共に遠い場所を目指して

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

月夜に散るは君か僕か 極彩色 @ruisyousetu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ