月夜に散るは君か僕か
極彩色
旅立ち
家出をする
ある日僕はそう決めた
学校では馴染めず家では空気のような存在
僕に存在価値などはない。と本気で考えた
だから僕は少しの荷物と財布をもって深夜に家を飛び出した
行く当てもなくただ遠いところを目指して
数分歩いただろうか夏の蒸し暑さが体中に纏わりつく
汗をかいたせいで服が肌にべたついて気持ち悪い
けれど不思議と家に戻ろうという気持ちにはならなかった
一歩一歩踏み出すたびに自分という存在が生きているように感じたから
そしてある場所で立ち止まる
昔よく一人で遊んだ公園だ
子供の頃は純粋に親から構われなくてもここに来るだけで楽しめた
僕は吸いこまれるようにその公園に入る
滑り台、ブランコ、砂場、シーソー
いかにも普通の公園だ
けれどひときわ目を引かれる場所があった
ブランコ
そこに一人の女性が座っている
なんの気の迷いか僕はその女性に話しかけた
「あの...どうかされましたか?」
急に人に話しかけられびっくりした様子の女性は思わず背中から地面に落ちてしまった
「あっ!すみません!」
僕は彼女に近づく
その瞬間僕は固まった
いわゆる一目ぼれというものをしたからだ
彼女に近づいて分かった
彼女の夜よりも暗い髪
彼女の星空のような蒼い目
そして彼女についた唯一の欠点というべきなそばかす
しかしそんな欠点にすらも目を奪われる
そして僕は無意識に口走ってしまった
「僕と一緒に遠いところに行きませんか?」と。
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