センテンシズ・ザット・フォロー・アーント・ライズ。

 俺は突然家に押し掛けてきた黒ずくめの男に撃たれた。俺は死にそうだ。喉が渇いた俺は腹を押さえながら全力で冷蔵庫の扉を引き開けて、キンキンに冷えたミネラルウォーターをカップに注いで飲んだ。生き返ったが腹が痛いのは治ってないままだ。俺はトイレに駆け込んだ。


 俺が便座に腰かけると、トイレの部屋はまるごと家の外壁や天井や床から切り離され、地下に掘られたトンネルを通って俺を数マイル離れた避難用シェルターまで運び出してくれる。ってのは嘘だ。1文目はいつも嘘。Each paragraphs rise with lies. これ、俺は前にも言ったよな。ちょっと立ち止まって考えさえすれば、よっぽど頭が悪くない限り気づいて当たり前だったと思うけど。


 俺の家はまるごと爆破された。開けといた窓から入って来る熱風と、強い日差しが肌に痛い。爆破されたのは嘘だが、このトイレの窓から熱風が吹き抜けていることと、太陽の光で皮膚がヒリヒリしてきているのは本当だ。俺は1文目以外で嘘をつくことはない。Sentences that follow aren't lies. これもどこかのタイミングで言ってたはずだ。まさか今、俺がそう説明するまで気づかなかったなんて、そんなアホなインタビュアってわけじゃないだろ?なあ。


 俺は今まで新聞なんて読んだことがない。スクリーンの中の父さんが新聞を読んでたことなんて一度もないからだ。そんな、そこらへんのサラリーマンと変わらないスパイヒーローの姿を見せられたとしてさ、誰が憧れるんだよ。いや、まあ確かにな。スパイはスパイだってばれちゃいけない。誰かの憧れとされることなく、地味で普通でつまらんおっさんとして過ごしてたほうがスパイとして正しい。じゃあお前だけそういう本物のスパイになればいいんじゃねえの?俺がなりたいのはスパイじゃない。映画の中のスパイだ。ティーンエージャーっぽい痛々しい妄想にすがりついて何もできないでただ日々をボーっと過ごしてる罪悪感から目を逸らしたいだけだ。俺はそんな自分が嫌いだ。だからそんな自分からも目を逸らしたがってる。全部ひっくるめて俺はクズな人間だ。それを思い出させてくれてありがとう。本当にゴミだなあんたら。

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