第33話 謎解き脱出ゲームの後。

 その後も浩介たちのグループでは彼が筆頭となり、ゴールにたどり着いた。


 平井 宗大は結局1回も見せ場を作ることが出来ずに終わり、もう完全にうなだれていた。


「えと……じゃあ、これでレクは終わりにします……」


 レクリエーション終了後の挨拶でも完全に意気消沈しており、学年全体から残念そうな視線で見られていた。


(お風呂の時間まではまだ時間があるし……ちょっと亜衣佳の配信でも覗くか)


 浩介は宿泊施設の目立たない場所でスマホを開き、イヤフォンをつけた。すぐに動画投稿サイトを開き、霧谷 アイのチャンネルを開く。


「おっ、よかった……まだ配信中だな」


 配信を開くと亜衣佳の歌声が流れてくる。浩介はチャット欄で他のリスナーたちと同じように弾幕を流した。


(この曲を歌ってるってことは……もうラストか)


 現在亜衣佳が歌っているのは霧谷 コウの楽曲の中でも非常に人気の高いバラード曲で、エンディングっぽさもある。彼の歌枠ではいつも最後に歌われる曲として有名だ。


『あっ、お兄ちゃ~ん! 遊びに来れたの? ありがと~~!!』


 そして亜衣佳はすぐに霧谷 コウがチャット欄にいることを把握し、間奏でそのように話しかけてくる。


「ははっ、もしかしたら邪魔しちゃったかな……」


 そんな風に独り言を呟くコウだったが、チャット欄は完全に歓迎ムードだった。


<コメント>

・霧谷 コウおるやんけ!

・よかったねアイちゃん!

・コウ氏、アイちゃんすごく頑張ってたでござるよ!


「うぅ~! みんなありがと~」


 そして続く涙交じりの霧谷 アイのラスサビに、多くのリスナーが涙を流した。この配信もまた、急上昇ランキングに載ったようだった。


 ◇


 その後、部屋に戻ってしばらくくつろいでから、浩介たちは入浴場へと向かった。体を洗い、お湯に身を浸すと一日の疲れが癒えていくようだった。


 入浴は班ごとに時間が決められており、その時間はそのグループの貸切となっているのだ。


――バシャバシャ!


「和田くんのグループは謎解きどうだった?」


「ぼ、僕たちの班は全然ダメだったよ。あ、新崎くんのグループは入賞してたよね、すごいよ」


 浩介は和田 拓海とのんびり今日のレクリエーションについての会話を交すのだが……。


――バシャバシャ!


 神条 清孝はひたすら彼らの周りをクロールで泳いでいた。


「か、神条くんのグループは優勝だったらしいね……し、しかも全ての問題を彼が解いたとか」


「まぁ……なんかやっぱり、彼は色々と次元が違うんだと思う」


 浩介と拓海はそんな会話をしながら周りをバシャバシャと泳ぐ清孝を見ていた。

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