第30話 バーベキューが始まる!

 全体で集合した1年生たちは、外に出てバーベキューを開始していた。


 説明を聞いた後グループごとに集まり、それぞれで串に肉や野菜を刺して焼いていく。


 浩介は妹の亜衣佳がコーディネートしてくれた外着で来ていた。


 朝は宿泊施設まで歩くことになるためみんなジャージだったが、今はそれぞれ私服だ。


 浩介は以前、休日に朱音の私服を見たことがあるが今日も変わらずオシャレだ。あのときとは違ってTシャツにデニムのショートパンツというボーイッシュなスタイルで、それがまたよく似合っていた。


 麗奈は薄手のジャケットを羽織っている。いつもの制服よりも短いミニスカートで、やはり今日も黒のニーハイソックスを身に着けていた。


 美緒は浩介が部屋に出向いたとき同様パーカーだが、部屋で来ていたのとは違う外用のグレーのパーカーだ。今日も長めの丈から見える綺麗な太もも、下には何もはいてないように見えるが……。


 私服姿の美女3人はクラスでも注目の的だ。そして浩介はその3人に囲まれて平然と肉や野菜を串に刺していく。


「はい、コウくんこれ食べて!」


「わ、わたしもコウさんのために作ったから……!」


 そんな浩介にすでに焼けた串を渡してくる朱音と美緒。


「ありがとう、順番にもらうよ」


(くそがっ、なんでだ……なんでアイツばっかり……)


(本当ならこの俺があそこで美女たちに囲まれていたはずなのに……)


 熊田 豪弥と池井 恵人は遠くからうらやましそうに浩介を見ているが、グループごとの行動となっているため指をくわえて見ているしかできない。この場合は指をくわえてというより串をくわえてだが……。


 と、浩介は麗奈が串に食材を刺すのに苦戦していることに気が付いた。


「小笠原さん、よかったらかして」


「あっ、はい……」


 浩介は麗奈から受け取った串に器用に食材を刺していく。


「はい、これ」


「あ、ありがとうございます……」


 麗奈はそれを受け取ると、大事そうに焼き始めた。


「うーん、なんかうまく刺せないなぁ……」


「わたしも全然だめだー!」


 そしてなぜか急にうまく食材を刺せなくなる美緒と朱音。


「いや2人はさっき俺に作ってくれたよね!?」


 そして拓海はそんな光景をいつものごとく興味深そうに眺めている。


(わぁ、やっぱり新崎くんハーレムじゃん……さっきの小笠原さんへのさりげない気遣いとか、やっぱりそういうのが大事なのか?)


 その隣では清孝がむっしゃむっしゃと肉を頬張っていた。


 そんな彼らの班のテーブルに担任の阿島 義男がやって来る。浩介は彼に話しかけた。


「あっ、阿島先生……見回りですか?」


「はは、まぁ……そんなところかな」


 そう言いながらも、職員たちのテーブルを気まずそうに見つめる阿島。


(まさか職員たちのテーブルを追放されたのか……まぁ、追放まではないにせよ遅刻して来たし肩身が狭いのかもしれない。阿島先生、こんな感じだけどなんか憎めないんだよなぁ……)


 そんなことを思った浩介は阿島に問いかけた。


「阿島先生も、よかったら食べていきますか? 今、ちょうどいい感じで焼けてるので」


「……いいのか? 悪いね、ありがとう」


 そう言うと阿島は一本の串に手を伸ばすが……。


「あぁっ、それはダメです! わたしの大切な串なので……! これ以外ならどれでもいいですけど」


 それは先ほど浩介が麗奈に渡した串だった。


(そんなに大事に取っといてたら焦げちゃうよ……!)


 と、心の中でつっこむ浩介。


「す、すまないね……どれ、じゃあこれにしようかな」


 麗奈に謝ると阿島は別の串を手にした。


「ほほぉ、いい感じに焼けていて肉が美味そうだ」


 そんなことを言って串を口に運ぶが……。


「うお熱っ!!」


 阿島は肉を口の中に入れる前に地面に落としてしまった。


「ちょっ、先生何やってるんですか~!」


 朱音がそうツッコむと、その場に笑いが生まれた。


 ――と、そんなとき、浩介は不意に視線を感じた。


「コウさん? 何かあったの?」


 近くにいた美緒が彼の不審な様子を感じ取ったのか、心配してくる。


「いや、大丈夫。なんでもないよ」


 美緒に返事をしてあたりを見渡すが、居たのは食材を追加で取りに来たのか、自分のクラスの場所へともどって行く他クラスの金髪の女子生徒だけだった。

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