第29話 部屋でトランプをする。
浩介は自分たちの寝床となる部屋で荷物をまとめていた。
部屋のメンバーは今回グループを組んでいる和田 拓海と神条 清孝だ。
2人とも高校で初めて知り合った仲だが、安心して一泊することができるメンバーだと浩介は思った。
中学時代まで浩介はぼっちだったため、いつも人数合わせですでに出来上がっているグループに追加される形だった。毎回居心地が悪く、こういった行事を楽しいと感じたことは1度もない。
しかし、今回は拓海も清孝もそれぞれに知り合って間もないという仲であるため、中学までのように居心地の悪い思いをすることはないだろう。
「ここが今晩、我らの本拠地となるアジトか。悪くないではないか」
むろん、この神条 清孝という中二病と一晩一緒に過ごすことにはなるが……。今も彼は腕を組んで窓から外を眺めている。
と、浩介はスマートフォンに通知が来ていることに気が付く。ネット上で使っているチャットアプリで朱音からのチャットだった。
<榎島 アカネ>ねぇねぇ、今から3人でそっち行ってもいいかな?
「今から同じ班の美鏡さんと小笠原さんと小夏さんがこっち来たいってことなんだけど、2人はいいかな?」
浩介は同じ班の拓海と清孝にも確認をする。
「ぼ、ぼぼ僕は大丈夫だよ」
「オーケーだ」
拓海は噛みながら、清孝はサムズアップをしてそれぞれに返事をしてくる。
「ありがとう、伝えとくよ」
<霧谷 コウ>大丈夫だよ、部屋の番号送るね!
浩介は朱音に部屋の番号を送ると、再び荷物の整理に取り掛かった。
◇
(はわわ……まさか本当に美女3人が部屋にくるなんて……!)
現在部屋には朱音と麗奈と美緒がいる。今まで女子生徒と一切交流のなかった拓海にとっては非常に刺激的だ。
(まぁ、彼女たちはみんな新崎くんのことばっかり見てるけど……ほんと新崎くんて何者なんだろうか……)
「はいっ、和田くんどーぞ!」
と、拓海がそんなことを考えていると朱音がカードの裏面を見せてくる。現在彼らは6人で朱音が持って来たトランプを使ってババ抜きをやっている。
「うっ、うん……じゃあこれで」
「ふふーん♪」
と、拓海がカードを引くと朱音が嬉しそうな表情を浮かべた。拓海の引いたカードはジョーカーだった。
(はぁ……なんかもうジョーカー引いても全然いいや。なに今の水鏡さんの表情、可愛すぎだろ……)
と、拓海が次にカードを引く清孝に裏面を見せる。
「私のターン、ドロー!!!」
清孝はそう叫ぶと物凄い勢いで拓海のカードのうち1枚を引いた。
(絶対こいつだけやってるゲーム違うだろ~~)
そんなことを心の中で叫ぶ拓海。なぜか清孝はその後も見事にジョーカーを避け続け、拓海はババ抜きに敗北してしまうのだった。
(なんかもう負けたけど全然いいや……こんな美女3人に囲まれてトランプできるなんて。試合に負けて勝負に勝ったっていうのはこういうことか……)
それから彼らは全体の集合時間になるまでトランプを続けた。拓海は1度も勝てず、なぜかいつも清孝が1番に上がっていた。
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