第25話 浩介を独り占めしたくて探り合う3大美女。
やがてバスは到着し、そこからキャンプ場までしばらく歩きとなるようだった。
「それではみなさん、はぐれないようにお願いしますよー」
遅刻したことで少ない髪ながらに寝ぐせのついた阿島が先頭を歩く。そこに連なるように、班ごとに固まって歩いている形だ。
「コウくん、ブランケットありがと。寝ちゃってて恥ずかしい……わたし変な顔してなかった?」
「大丈夫だったよ、朝早かったからね、休めたならよかったよ」
(うぅ、せっかくコウ君の隣で過ごせるバスの時間が~! けど終わったことは仕方ない、ここから取りかえさなきゃ)
朱音は浩介にブランケットを返しつつ、さりげなく彼の近くのポジションで歩き始める。
朱音はこのキャンプでちょっとした目標があった。
それは同じ班の女子生徒である麗奈と美緒はなぜこんなに浩介と親しいのか? という理由を探ることだ。
自分が一番浩介のことを知ってるのに……そんな、彼を独り占めしたいという気持ちがないわけではない。
けど、麗奈も美緒もすごくいい人だし、敵対したいわけじゃない。だからこそ変に彼女たちと浩介の仲を探るようなこともしなかった。
だから、理由を知って納得したい。そんな気持ちが朱音にはあった。
そしてそれは、麗奈と美緒も同じだった。
3人ともそれぞれに思っているのだ。なぜこの2人はこんなにも浩介と親しいのか、と……。
そしてなんとなくそれを浩介も察していた。けどネット上で繋がっていることは明かしていないし、どうしようかと考えている。
「新崎くんと水鏡さんって仲いいですよね。同じ中学だったんですか……?」
(いきなりブッ込んできたー!)
そして早速そんな探りを入れてくる麗奈。
「確かに、なんか幼馴染みたいだよね」
さらに美緒もそんなことを言ってくる。
「えへへ、そんな風に見えちゃう?」
(そしてなんで朱音はそんな嬉しそうにしてるんだ……)
「アカ――美鏡さんとは高校で知り合ったんだよ」
「ふーん……」
「そうなんだ~」
あまり納得してなさそうな麗奈と美緒。
「というか。それを言うなら小夏さんだってコウく――新崎くんと仲いいよね? 一緒に登校して来てるし」
「えっへへぇ……」
(だからなんでコナツもそんなに嬉しそうにしてるの!)
「コナツ……さんとは家が近くて、同じ電車になるから途中で会うことが多くてさ」
「そっかぁ、じゃあ小笠原さんは? 隣の席だから?」
「まぁ……そんな感じ、だよね?」
浩介が麗奈視線を向けると、なぜか彼女は不敵な笑みを浮かべた。
「ふふっ、そうですね。まぁ、それだけじゃないですけど♡」
(ちょっ……)
「「えぇーーーーー!!」」
浩介にとってキャンプ場に着くまで、ある意味修羅場のウォーキングとなった。
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