第24話 バスの中で色々考える陰キャぼっち。

 浩介たちはバスの中で出発を待っていた。


 なんでも担任の阿島が遅刻したらしくバタバタしているようだ。


 このキャンプにおいて、浩介にはちょっとした目的があった。それは今彼の後ろの座席に座っている小笠原 麗奈の正体を知ることである。


 図書館で寝落ちしてしまったときに囁かれたときから考えていた。


 この高校に入学し、朱音や美緒、そして妹までがネットで繋がりのある存在だったことが発覚した浩介としてはもはや確信していた。


 麗奈もきっとネット上で繋がっている誰かなのだろうと。


 それでもこれまで麗奈にその話題を振らなかったことには2つ理由がある。


 麗奈はあのとき浩介のことをコウと呼んでいた。しかしその呼び方で考えられる人物は彼にとって2人存在した。


 同期のWeb作家である雪凪 レイともう1人、浩介の小説が書籍化した際に表紙や挿絵を担当したイラストレーターの月宮つきみや ミラだ。


 正直どっちが麗奈なのか、浩介にははっきりしていないというのが1つ目の理由。


 そしてもうひとつは、美緒のように自分の正体を知られたくなくて隠しているという可能性もあるということだ。


(まぁ、俺が寝てるときにあんな大胆に来たし、思い過ごしかもしれないけど……)


 そんなことを考えていると、阿島も無事バスに乗り込めたらしく、目的地へと向かってバスが動き出した。


 ふと、肩に柔らかい感触が当たる。眠ってしまったらしい朱音がバスの振動で、浩介に寄りかかってきていた。


(静かだと思ったら……まぁ、集合時間早いしな)


 そんなことを考え、浩介はバッグからブランケットを取り出して彼女にかけてあげるのだった。


 ◇


(ついに始まったんだ……ボクの最初で最後かもしれない美少女たちに囲まれたキャンプが!)


 和田 拓海はバスの中で、それはもうウッキウキだった。


 なんせ浩介からグループに誘われ、クラスの三大美女である美鏡 朱音、小笠原麗奈、小夏 美緒と同じ班で一泊二日のキャンプを楽しめるのだ。


(まぁ……さっそく日和ってバスの席は神条くんの隣を選んじゃったけど……)


 けどそれでいいのだと拓海は自分に言い聞かせた。むしろ3人のうちの誰かと隣の席になったとして器用に会話をできるとも思えない。それでつまらないヤツだと思われて嫌われてしまったら本末転倒だ。


 なんにせよ、拓海は楽しみでいっぱいだった。


(それはそうと、さっきから隣がうるさい……)


 神条 清孝は寝ていたと思ったらバスの発車と共に起き始め、持参のおやつを食い荒らしている。


(ってうわっ、学級委員長の池井ってやつめっちゃこっちの方睨んでるんだけど! うわ、あの熊田ってやつもだ。まさか、ボクが三大美女と同じ班だからって恨んでるのか……あわわ)


 なんか色々と考えて落ち着かない拓海だった。


 キャンプはまだ、始まったばかりだ。

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