第22話 班決めで次々とざまぁされるクズ生徒たちと、無双する浩介。

「え~、来週君たち1年生は1泊2日のキャンプがあります。まぁ、ちょっとした新入生の親交を深めるための行事ですな」


 この日の最後の授業はロングホームルームだった。


 そして浩介たちの担任である阿島 義男の口から発せられたのは、来週行われる1泊2日のキャンプイベントについてだ。


「それで……キャンプは班で行動することになっているので、この1時間でみなさんにはグループを作ってもらいます」


 唐突に行われることになった班決めに、教室内は騒がしくなる。班は男子3人女子3人の6人グループとなるようだ。このクラスは男子15人女子15人の30人なため、ちょうど割り切れることとなる。


 しかし、年頃の少年少女たちの気持ちは人数のように簡単に割り切れるものではない。


 仲のいいグループからはぶられたくない。気になる異性と同じグループになりたい。そもそも入れるグループがない……なんにしても決まって各々の思惑が渦巻くのが班決めというものである。


「それでは私は自分の業務もありますので……学級委員長のおふたり、あとはお願いしますぞ」


 そういうと、担任教師は教室を出て行ってしまった。


「それじゃあ阿島先生から代わりまして……班決めをしたいと思います!」


 そう言いながら壇上に上がったのは朱音だ。このクラスの学級委員長は朱音ともうひとり、池井いけい 恵人けいとという男子生徒である。彼は浩介と同じ中学の出身だった。


 朱音は言わずもがな、恵人もクラスでは多くの生徒から支持されている人気者となっている陽キャ男子だ。


 クラスで話し合いを行った結果、最終的に班決め方法はそれぞれ自由に組みたい人と組むという形となった。


 それもそうだろう、クラスで班を組む相手が居ないぼっちにとっては苦痛でしかないが、それ以外はみな仲のいい生徒と組みたいに決まっている。


 まず最初に動いたのは熊田 豪弥だった。もちろん彼はいつもつるんでいる3人でグループを固める。そして彼らにとって最も重要なのが女子たちの存在だ。


 可愛い女子生徒を自分たちのグループに入れたい。彼らはそれしか考えていない。


 しかし、このクラスの2大美女である美鏡 朱音と小笠原 麗奈にはすでに嫌われてしまっている。そこで目を付けたのが、少し前から登校し始めて来た小夏 美緒だ。


 美緒も朱音や麗奈に劣らない美人だ。それでいて、転校してきたばかりでそこまでクラスに馴染んでいないためすぐに自分たちになびくに決まってる……と彼らは思っているようだ。


「よぉ美緒、俺たちの班に入れてやるよ」


 そしていつものごとく、呼び捨てで痛いセリフを吐く豪弥。


「え……別にいいです」


 そして明らかに引かれているのにも関わらず、彼の仲間たちも調子に乗って声をかけ始める。


「照れなくていいからさ」


「そうそう、俺たち優しいからさぁ。美緒ちゃん学校来たばっかりでまだ友達とかいないでしょ? だから――」


「いや照れてないし……入れてやるってなんでそんなに偉そうなんですか? あなたたちとグループ組みたいとか一切思ってないし、そもそも話すの初めてですよね? わたし普通にグループ組みたい人いるんで」


 当たり前だが、彼らは一瞬でドン引きされ、美緒は浩介のもとへと向かって行った。


「クソがッ! なんでまたあの陰キャに……」


 教室内だと言うのに、一切下心を隠そうとしない豪弥たち。彼らに対するクラスメイトの評価は完全にどん底に落ちたことだろう。


(ふっ、本当にバカなヤツだな熊田は。あんなあからさまにやって上手くいくわけないだろう)


 一方、そんな豪弥たちを見て不敵な笑みを浮かべる男が居た。学級委員長の池井 恵人だ。


「おーい、恵人」


 そんな恵人に、仲のいい陽キャグループの男子生徒たちが声をかけてくる。


「うん? どうしたんだ」


 その瞬間、彼は先程までの悪趣味な笑みを一瞬で隠した。


「グループどうするよ。男女3人ずつなんだよな? だとしたら俺ら……」


 恵人を呼んだ男子が困ったようにうつむく。恵人たち男子はいつも4人でつるんでいる。そのため、一人だけあぶれてしまう形になるのだ。


 どうやらこのグループの女子3人はすでに確定しているようだ。やっぱりみんなクラスで目立っているいわゆる一軍女子たちである。


(まぁ、悪くはないメンツだな……けど、この俺がグループを組むにはふさわしくない。俺はこのキャンプでこのクラスの3大美女を落とすって決めてるんだからな。ククッ、考えただけで笑いがもれそうだ)


 そんな心境をおくびにも出さず、恵人は彼らに向かって言う。


「男子はおまえたち3人で組んだらいいさ。俺は学級委員長だ、人数が足りてない班の埋め合わせにでも入るよ」


「恵人……おまえマジでいいやつだな」


 恵人の友人は彼の本性など一切知らず、感動したように彼の肩を叩く。


「恵人くんホント優しい」


「恵人くんと組めないのは残念だけど、わかったよ」


 グループの女子たちも彼を賞賛する声を次々とあげる。そう言った声を受けてある程度気持ちよくなったとこで、恵人は本命の3人の元へ向かった。


 彼女たちは案の定、浩介のもとに集まっていた。


(ホント、なんで急に中学までぼっちだった新崎の奴があんなにモテてるのかは謎だ。けど理由なんざどうだっていい。なんせ彼女たちは、このイベントでみんなこの俺のものになるんだからな!)


「新崎、グループは決まったのか? よかったら俺と組まないか? 中学のよしみでさ」


 あくまでも自然に、本心をもらさないように浩介に言い寄る。そうすることで、女性陣からの好感度も上げた上で彼女たち3人と同じグループになる作戦だ。


(ふっ、確かに女子たちからは気に入られてるようだが……相変わらず高校でも男友達はいないようだからな。ぼっちのおまえが俺の誘いを断ることはないんだ)


 確かにグループを作るには、浩介はあと2人男子生徒を集めなければならない。だからこそ恵人はその弱みに付け込んだのだ。


「いや、結構だ」


「は……?」


 しかし一瞬で断られ、恵人はまぬけな声を上げる。


「グループならもう決まってる」


 浩介の言葉を聞いて周りをよく見ると、確かにあと2人の男子生徒が近くにいた。


 いつも1人でいる陰キャの和田 拓海と、よく廊下で奇声を上げている中二病の神条 清孝だ。


 キャンプがあるということはいずれ班決めが行われるはず……そう見抜いていた浩介は、この授業よりも前にすでに男子2人を集めていたのだ。


(中学の頃、ぼっちの俺は班決めで散々嫌な思いをしたからな……それに池井のやつ、中学のよしみとか言ってるけど絶対女性陣が目当てだろ)


 そんなことを考える浩介。


 それを見て完全に敗北を悟った恵人は再び仲のいいグループのもとに声をかけに行く。


「なぁ、グループであぶれてるヤツいなさそうだからさ、やっぱり男子4人のグループでも……」


 そして冷静さを失い、せめてまだマシな陽キャ女子たちと同じグループになろうと考える。


「いや、でもこのクラス30人だからぴったりになるはずじゃないか?」


「あっ、そういえばあのグループが、男子1人たりないみたいだぞ」


 そうして恵人は結局、クラスで一番目立たない……彼的に言えば陰キャで一切興味のない女子しかいないグループに入れられてしまうのだった。


(そんな、この俺がこんな地味なグループなんて……ありえない)


 心の中で延々とそう呟くが、もう遅かった。


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