第21話 とある陰キャぼっちなクラスメイト。

 浩介が所属するクラスである1年1組。


 昼休み、その教室の隅っこで陰キャぼっちの男子生徒である和田わだ 拓海たくみはとある一点を不思議そうに見つめていた。


 教室の廊下側の一番前、新崎 浩介の席だ。


(ほんとにどうなってるんだ……)


 現在、浩介の席にはこのクラスで拓海が可愛いと思っている女子生徒3人が集まっている。


 クラスで中心的な存在の人気者、美鏡 朱音。


 クールな孤高の美少女、小笠原 麗奈。


 今日初めて登校して来た小夏 美緒。


(いったいどうやったらあんな美少女3人に囲まれられるんだ? こう言っちゃ失礼だけど、新崎くんって全然目立つ感じの生徒じゃないし、どっちかというとボクと同じで陰キャっぽい感じなのに……)


 入学式の初日、浩介は名前の順で1番に自己紹介をすることになり、ものすごく地味な自己紹介をしてしまった。


 そのとき拓海は思った。この人となら陰キャな自分でも友達になれるかもしれない、と。


 ぼっちになりたくない拓海は浩介に話しかけるタイミングをうかがった。しかし、なぜか彼はいつも朱音や麗奈に声をかけられている。


 さらには今日初めて登校して来た美緒ともすでに仲がいい感じだ。


(いったい彼とボクはなにが違うんだ……まぁ確かに、新崎くんはボクよりもスタイルがいいし、清潔感もある。けど、クラスで目立つ感じではない。なのに美少女たちは陽キャ男子たちを差し置いて彼に話しかける! こんなのもうラノベ主人公じゃないかっ!)


  理由はわからないけれど完全に自分に入るスキがない浩介と仲良くなることは諦め、脱ぼっち作戦を考える拓海。


 そんな彼の頭に1人の男子生徒の姿が浮かんだ。


 神条かみじょう 清孝きよたかという名前の響きだけはラノベ主人公っぽくてカッコいい、しかし見た目は眼鏡の太った男子生徒だ。彼は自己紹介でいかにも中二病っぽい発言をして浩介とは別の意味で滑った。


(クラスではほとんどグループができ始めている。彼との接触を図って友達になるのが唯一ぼっちを回避する方法だ)


 幸い清孝はオタクのようで、アニメやラノベが好きな拓海は話が合いそうだ。


(今日こそ、彼に話しかける……!)


 勇気を出して席を立ちあがり、清孝の姿を探す拓海。


「もっとだ……もっと速くッ! 切りつけるッ! うおおおおおおおぉ!」


「…………」


 廊下で奇声を上げ、2本のホウキを振り回す清孝を見て拓海は思った。


(だめだ。なんかもう、次元が違う)


 拓海はその光景を見なかったことにして、今日も自分の席でひとり弁当を広げて食べ始めるのだった。

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