第19話 美緒とイチャイチャする。

 学校がある朝、普段浩介は自転車でまっすぐに最寄り駅へと向かっている。


 しかし今日は違った。早めに家を出て、とあるアパートへと向かう。自転車を停め、2回程プリントを届けに行ったあの部屋へと向かう。


 昨日、浩介は美緒から告白を受けた。恋愛的な意味ではなく、自分の正体についての告白だ。


 その後、彼女は高校に行く覚悟を決めたようだった。


 配信アプリで知り合い、初めて通話をしたあの夜からの仲間として、浩介は一緒に登校することを決めた。すこしでも緊張が和らいでくれればと思ったのだ。


 ――ガチャ……。


 ちょうど美緒の部屋がある階にたどり着いたとき、彼女は部屋から出て来た。


「あっ……おはよ」


 少し照れくさそうに浩介を見て手を振る美緒。


「あっ、あぁ……おはよう」


 美緒は制服がすごく似合っていた。校則を違反しないくらいにスカートも短くしていて、膝下の黒ソックスをはいている。黒髪ボブの前髪に、今日はヘアピンなんかも付けていた。


 つい見とれてしまいそうになる気持ちを抑え、浩介は美緒と一緒に駅まで向かうことにした。


 駅に近いため、自転車はアパートの駐輪場に置かせてもらって2人で歩いていくことにした。


「コナツ……大丈夫そう?」


 浩介はホームで電車を待っている間、隣に座る美緒を気遣うように話しかける。


「うん、平気。頑張るって決めたから!」


 吹っ切れたような彼女の表情に、浩介は安堵する。


「でも……」


 と、美緒は少し体を傾けてくる。浩介の腕に彼女の体の温もりが広がって来る。さらに、急に手の平が柔らかい肌の感触に包まれた。


「やっぱり少しこうしてていい?」


「そっ、それで安心できるなら……!」


 美緒は両手で浩介の手を握っていた。


「えへへっ、嬉しいなぁ。リアルでコウさんの手を握れる日がくるなんて……」


 美緒は白く綺麗な長い指で、浩介の手の平の感触を確かめるように力を加えてくる。あくまでも、美緒は大切な仲間とのスキンシップのつもりなのだろうが……。


(~~~……!!)


 こんなことをされ、心臓はバクバクと激しく鼓動を刻んでいる。


 それから電車を待っているまでの間、浩介はひたすら彼女のスキンシップに見悶えるのだった。


 #


 その後、2人は電車に乗った。


(やっ、ヤバい……コウさんの手、あんなに触っちゃった……)


 勢いでスキンシップをしてしまったものの、恥ずかしくなってしまった美緒は浩介の顔を見られず、外の景色ばかりを眺め続けていた。

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