第16話 再び美少女の家にプリントを届ける。

 放課後、本日も浩介は小夏 美緒が住んでいるアパートへと向かった。


 届けるべき重要なプリントがあったためだ。


 今日も浩介は電車の中で朝日奈 コナツの配信を見ていた。とはいえ今日の配信は夜からの予定らしく、現在は配信をしていないので過去のアーカイブ視聴だ。


(やっぱり、小夏 美緒と朝日奈 コナツはあまりにも違い過ぎる)


 もちろん配信ではロールプレイを重視するライバーも多いため、リアルと配信での性格や口調が違うということはあるだろう。


 ただ、ローププレイにも限界はある。長く続けていれば少なからず本来の人格の片鱗が見え隠れするものだし、そもそも浩介は朝日奈 コナツと通話で会話もしている。


(やっぱり別人か……けど、この前の反応はやはり気になる)


 反応が気になると言えば、彼にとって現状もう1人考えなければならない存在がいた。


 小笠原 麗奈だ。結局図書館ではあのあとしばらくしてから起きたふりをしたら、麗奈はあの囁きが嘘なのではないかというほど澄ました顔で本を読んでた。頬を赤らめていた気はするが……。


(まぁ、今は小夏さんの件に集中するとするか)


 最寄り駅に到着する。今日はアパートに向かう前に近くのコンビニに寄ることにした。


 喉が渇いており、ペットボトルの水を購入しようと飲料コーナーに向かう。


(小夏さんにも何か差し入れに買って行ってあげるか……いやでも、好きな飲み物とかわかんないや)


 と、ふと浩介は思いつくことがあった。


(あっちのコナツはエナドリが好きなんだよな……)


 彼はエナジードリンクを手に取り、レジへと向かった。自分の分の水と、なんとなく直感で買ってしまったエナジードリンクを手にコンビニを出ると、1人の女性の後ろ姿があった。


 黒髪のボブヘア。今日も黒のパーカーで、下には何もはいていないのか白のシャツから色白の健康的な太ももが全開にさらけ出されている。


(これはアパートまで行くよりここで渡しちゃった方がいいか……後をつけてるみたいになっちゃうし)


 そう思い、浩介はここで声をかけることにした。


「あの……小夏さん?」


 すると彼女は振り返り、彼の顔を見るなり驚いた表情を浮かべる。


「コゥ……あっ、新崎さん! もしかして、またプリント届けに来てくれたんですか? ごめんなさい、お手数をおかけして」


「大丈夫だよ……コンビニ寄ったらたまたま見かけたから、ここで渡しちゃおうかと思って」


 と、浩介は彼女の持っているレジ袋に視線が行く。中にはエナジードリンクが大量に入っていた。


(そう言えばコナツが言ってたな……夜から配信するときは集中力を高めるために近くのコンビニでエナドリを大量に買うって。それにさっき、やっぱり名前言い直したよね?)


「あの、小夏さん――」


 人違いだったらそれはそれで仕方がない。真実が気になった浩介は気になっていることを問いかけようとするが……。


「新崎さんっ! あのあの、今日は、部屋に来てくれませんか? 見せたいものがあるんですっ」


「えっ……」


 美緒の真剣な表情を見て断るわけにもいかず、浩介は彼女に着いて行くことになった。

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