第15話 隣の席のクール美女も様子がおかしくなった……。
朱音との打ち合わせ(デート)を終え、再び月曜日がやって来た。
浩介は朝から異変を感じていた。隣の席の美女、小笠原 麗奈がやたら意味ありげに彼の方を見てくるのだ。
「小笠原さん?」
「あ、いえ……別に」
しかも声をかけるとなぜか目をそらしてしまう。その際に頬を赤らめていることは、顔を背けられている浩介には知りえなかった。
放課後、外は激しく雨が降っていた。
(かなり降ってるな……図書館でも行くか)
この雨ではバスや電車の乗り降りは面倒だ。浩介は校舎内にある図書館で時間を過ごすことにした。
高校に入学してから、浩介はよく図書館を利用している。中学にあった図書室よりも広くて冊数も多いし、なにより熊田 豪弥のような下劣な人種が図書館には湧きにくいというメリットもある。
静かに憩いの時間を過ごすには持って来いだった。
(ラッキー、いつもの席が空いてる)
激しく雨が降っているためか、図書館内はいつもより人が多い。きっと浩介と同じように雨がやむまでここで過ごそうと考えているのだろう。
しかし、いつも浩介が使っている最奥の席は空いていた。壁際なので落ち着くし、窓が目の前にあるから天気の様子もすぐに知ることができる。
浩介がしばらく本を読んでいると、隣の机にバッグが置かれた。
「隣、いいですか?」
教室でお隣さんの小笠原 麗奈だった。今日も黒のニーハイソックスを身につけている。
「あぁ、もちろん。小笠原さんも雨宿り?」
「えぇ、濡れるのは嫌なので」
図書館の中なのでいつもより少しボリュームを落とした声でそう言いながら、麗奈は椅子を引いて座った。腰のあたりまでまっすぐに伸びるサラサラな紺のロングヘアが揺れる。
それからお互いに本を読み始める。教室のときと同じく、ときおり麗奈はお洒落な丸眼鏡の奥の瞳をチラチラと浩介に向けていた。
しばらくしても雨は止まず、目が疲れた浩介は少し机に突っ伏して休むことにした。思ったよりも疲れていたのか、彼はまどろみの中へと落ちていく。
「……新崎くん、寝ちゃいました?」
麗奈が問いかけるが、眠っている彼の耳に声は届かない。
浩介が寝ていることを確信すると、麗奈は頬を緩めて顔を近づける。
「寝顔可愛い……」
そして白く細い指で、彼の頬をツンツンとつついたりする。
「コウ、大好きだよ……ずっと会いたかった♡」
そして、そんな言葉を囁くのだった。
#
(ど、どうすりゃいいんだよおぉぉぉぉぉ!)
一方、麗奈の頬っぺたツンツンで目が覚めてしまった浩介は今さら起きあがることも出来ず、彼女の囁きに見悶えるしかなかった。
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