第14話 朱音とイチャイチャする。
妹に身バレした次の日、日曜日だ。
浩介は外出する準備をしていた。本日、彼はアカネと打ち合わせをするため直接会うことになっている。アカネの方から打ち合わせをしたいとの連絡が来たのだ。
髪形や服装は亜衣佳が整えてくれた。あの様子だと、同級生の女子と会うなんて言ったら大変なことになってしまうかと思ったが、彼女はむしろ協力的だった。
本人曰く「ガチ恋勢はガチ恋勢でも、推しをエゴで縛るような厄介ファンにはならないよ! 一切見返りを求めず、純粋な応援の気持ちで推しを支え続けるのがオタクのあるべき姿なんだから!」とのこと。
(俺の妹はオタクの鑑だった……!)
昨日は実の兄と結婚するとか言ってたけど……とは思ったが口には出さなかった。すぐに引き下がってバーチャル妹になると言ってくれたあたり、きっと彼女も本気でで結婚できるとは思っていないのだろう。
むろん、そう言った願望はあるのかもしれないが。
かくして服装と髪型を整えた浩介はオタクギャルの妹と糸目お姉さんの母親に見送られ、待ち合わせ場所であるカフェへと向かった。
早く着いてしまったようで、浩介はしばらく外でスマートフォンを操作する。主にチャットの返信や、ネットで繋がっているみんなのSNSチェックだ。
「おまたせ~」
しばらくして朱音がやって来る。
「アカネ、おはよ……うぁ!?」
そこにいた、いつもと違う朱音の姿に浩介は変な声を出してしまった。
初めて見る私服。薄手の白いコートに下は黒のミニスカート。スラっと長く、それでいて太ももには肉付きのいい健康的な脚を大胆にさらけ出している。
いつも一本にまとめている茶髪は肩まで降りており、綺麗にウェーブを描いている。アクセサリーなんかも身に着けており、高校で見るよりかなり大人っぽい魅力があった。
「あっ、あの。やっぱり変……かな?」
朱音は頬を赤くして、恥ずかしそうに髪を手でいじいじする。
(あ、ヤバい。あまりの衝撃につい無言で見とれてしまった……)
「ごめんごめん、全然変じゃないよ。あまりにも大人っぽくて綺麗だったからつい……」
「ふぇあっ!?」
今度は朱音が変な声を出した。
「なっ、わわっ……と、とりあえず中入ろ? ……ね?」
朱音は褒められることにかなり弱いようだった。
カフェに入り、それぞれに昼食や飲み物を注文する。お互いに食べ終わったあたりで、朱音が本題を切り出す。
「それで今日コウくんを呼んだ目的なんだけどね……じゃじゃーん! 新衣装作って見ましたー!」
「うおぉ~!」
朱音がバッグから取り出した紙には、霧谷 コウのVの姿の新衣装のラフが描かれていた。
「すごい……カッコいい!」
霧谷 コウ初期衣装はヘッドフォンをつけて部屋着を着ており、創作活動をしている彼をイメージして描かれたものだった。
それに対し、新衣装はアニメの登場人物のようなファンタジー系統だ。恐らく彼が書いている現代ファンタジー小説と重ね合わせたのだろう。
「すごいよアカネ、ありがとう。この衣装で2Dモデルになるのが楽しみだ」
「えへへぇ、気に入ってもらえてよかった。コウくんとリアルで会って、色々イメージが変わった部分があったからね。それを反映させてみたんだ~」
と、ふと浩介は気が付く。
初期衣装は比較的優し気な表情をした少年って感じの見た目だった。しかし今回は、クールでカッコよさに全振りされている。
(リアルで会ったイメージを反映させたのがこのイラストってことは……いや、変なことを考えるのは辞めよう。きっとファンタジー衣装だからそのイメージに近づけたんだよな、うん)
己惚れてはいけないとそんなふうに考える浩介だが、実際朱音の瞳には彼がイラスト通りカッコよく映っていた。
それから彼らはしばらく談笑を交すとカフェを出て、その後も休日を楽しんだ。
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