第9話 妹との会話。チャットや通話で集まって来る美少女たち。
小夏 美緒が住んでいるアパートにプリントを届けてから、浩介はまっすぐ家に帰宅した。
今日も入浴や着替えを済ませると、リビングのソファーで妹の
「帰ってたのか、おかえり」
「ん、ただいまー」
現在中学1年の妹は浩介に視線も向けず返事をする。
妹とは特別仲が悪いわけではないけれど、そこまで仲がいいわけでもない。微妙な距離感を互いに感じながらも、挨拶くらいは交わすという感じだった。
しかし浩介が自室に向かおうとすると、めずらしく亜衣佳が話しかけて来た。
「あ、お兄ちゃん……今日お母さん帰り遅いって」
「そうなのか、教えてくれてありがとう」
足を止めた浩介はキッチンに向かうと料理を始めた。彼は母親と妹との3人暮らしだ。そのため母親が居ない日はだいたい彼が夕食を作っている。
夕食を作り終える頃には、妹は自室に戻っているようだった。浩介は妹の部屋の前に作り置きした夕食を置き、自分の部屋に入る。
そして、そろそろ動画投稿サイトに予約投稿した楽曲が公開される時間だったことに気が付く。
入学式の日、アカネからPV用のイラストを送ってもらった楽曲だ。
『おっ、そろそろ公開だ。今日はね、前にわたしのオリジナル曲も作ってくれた霧谷 コウさんの新曲が上がるんだよ~』
朝日奈 コナツの配信をつけると、彼女は今日も配信で俺の楽曲について話してくれているようだった。
彼女はいつも楽曲を投稿するのを楽しみにしてくれていて、自分の配信を開いている時にはこうして同時視聴をしてくれている。
――ピコンッ。
と、ネット上で使っているチャットアプリの通知音が鳴る。
<
雪凪 レイは、浩介がWeb作家として活動している中で出会った仲間だ。同じ時期に書籍化を果たしており、お互い同期のように思っている存在である。
浩介のボカロPとしての活動も認知してくれているようで、楽曲公開前にはこのようにチャットをくれたりする。
<霧谷 コウ>ありがとう!
~♪~!~♪ ~♪~!~♪
レイにチャットを返すと、今度は通話がかかって来た。
『もしも~し! 今かけちゃって大丈夫だった?』
「大丈夫だよ、もうすぐ公開されるから一緒に見よう」
通話をかけてきたのはイラストを担当している榎島 アカネだ。初めてイラストを依頼してからPVのイラストは毎回彼女が担当しているため、もはや相棒のような存在だ。
そのため、新曲を公開するときにはこうして同時視聴をするようになっていた。
やがて予約公開の時間が近づき、カウントダウンが始まる。
5・4・3――
#
――2・1・0!
カウントダウンが終了し、スマートフォンからイントロが流れ始める。
「うわイントロえぐッ、もうすでに神曲確定でしょ♡」
その神曲を隣の部屋にいる兄が作っているとは知らない、霧谷 コウの大ファンである亜衣佳はすでに限界化していた。
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