第6話 朱音が浩介を好きな理由②
「えっ、わたしがコウさんの曲のイラストを……いいのかな」
朱音は迷った。確かにコウは朱音のイラストを好きだと言ってくれている。そのおかげで自己肯定感も上がり、描く量も格段に増えたことに比例して実力も上がった。
しかし、今までの批判や指摘、中傷を受けたときのトラウマが強すぎて引き受けていいのかわからなかった。正直、何度か断ろうと思ったほどだ。
(でも、コウさんはわたしのイラストをいいと思って依頼してくれたんだよね。だったら期待に応えなきゃ)
朱音は考えた果てに、コウの依頼を受けることにした。
そこからは細かい打ち合わせをするためにチャットアプリを使って話すことにした。
《霧谷 コウ》引き受けてくれて本当にありがとうございます……!
《榎島 アカネ》こっちこそ、コウさんの曲のイラストを担当できるなんて嬉しいですっ!
コウはチャットでも丁寧で誠実だった。
無意識的にだが朱音には、徐々にコウ対して異性としての好意のようなものが芽生え始めていた。
やがてイラストを完成させ、楽曲が動画投稿サイトに投稿された。
コメント欄は、朱音のイラストを賞賛するコメントで溢れている。
・曲の世界観にぴったりのイラスト!
・神絵師爆誕でござる。
・コウさんの曲とアカネさんのイラストの相性よすぎ!
「………!」
初めてネットで批判をされたときとは逆に、アカネは喜びで言葉を失った。
特にコウとアカネの相性がいいという言葉(もちろん楽曲とイラストの相性がという意味だが)には頬が緩んでニヤけるのを止められなかった。
「えへ、えへへへ……」
アカネはなんどもコメントを咀嚼するように読んでは頬を赤らめた。
その後、今までチャットでしか話したことのなかった2人は初めて通話で話すことになった。
『通話ありがとうございます。どうしても直接お礼を伝えたかったので……!』
「いやいや、お礼をいうのはこっちの方です……わたし、こんな風に多くの人からイラストを褒められるの初めてで、本当に嬉しくて……!」
『それなら本当によかったです。あっ、今回の依頼させてもらった分の収益が振り込まれてるはずなので確認しておいてください!』
コウは今回の依頼分だけではなく、アカネが担当したイラストの楽曲で得られた広告費のうちの半分をそれから毎月報酬として分けてくれた。
最初は申し訳ないと思いアカネは遠慮していた。
「そんなに報酬もらっちゃ申し訳ないですよ……!」
『いえいえ、今回の楽曲がここまで伸びているのはアカネさんのイラストの力があったからです。イラストレーターを続けるのにもお金がかかるでしょう? もしよければ活動費として使ってください!』
そこまで言ってくれるなら……と思い、アカネはコウからもらった報酬で少しずつペンタブやソフトウェアもグレードアップしていくことにした。
実際、中学生でお金のないアカネにとって資金は死活問題だったので非常にありがたかった。
今回の楽曲投稿から、霧谷 コウの楽曲は毎回、榎島 アカネが担当することになった。
のちにコウがVTuberとしても活動することになり、アカネが担当絵師となるのだが……それはまた別の話だ。
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