第4話 バカにしてくるクズ生徒たちがざまぁされる①

 ――翌朝。


 今まで中学では朝のホームルームが始まるギリギリに登校していた浩介。しかし今日はかなりの余裕をもって高校に到着した。


 アカネと会えるという楽しみが、彼の原動力になっているのかもしれない。


 しかし教室に入ってすぐ、浩介は絶望した。彼の席には既に1人の男子生徒が座っている。


 熊田くまだ 豪弥ごうや。中学時代、いつも浩介をバカにしてきた男だ。最悪なことに3年間同じクラスだった。


 昨日、高校でも同じクラスだと言うことに浩介は絶望したが、朱音と会えたことで嫌な気持ちはかなり和らいでいた。しかし、教室に入るなり席を占拠されている光景に絶望が蘇る。


「おっ、ぼっちの新崎じゃん。おまえ何こんな早く来てんの? あの陰気臭いぼさぼさな髪がお似合いだったってのに、ちゃっかり散髪なんかもしちゃってさぁ。高校デビューして調子のっちゃってんのかぁ?」


 そして最悪なことに、豪弥は浩介を見つけるなり悪口をまくし立てて来た。そしてさらに豪弥は、彼の高校でできた友人と思われる数人の男子たちにも浩介をバカにするようにけしかける。


「こいつ中学んとき同じクラスだったんだけどよぉ、3年間ずっとボッチだったんだぜ~」


「マジかよ、ひゃははは!」


「いかにも陰キャオタって感じだもんなぁ~」


 豪弥に便乗し、周りの男子生徒たちも下品な声を上げて笑ったり、浩介をバカにしたりし始める。


(くそが、なんなんだよ……朝から最悪の気分だ)


 理不尽に暴言を吐かれ、気分を害した浩介は教室を出ようとする。


 しかしそのとき、教室の扉からひとりの女子生徒が入って来る。


「コウ君おはよ~!」


「あっ、アカネ……」


 美鏡 朱音だ。今日もウェーブのかかった明るい茶髪のポニーテールがよく似合っている。


「学校来たらコウ君と話したいことあったんだ~、わたしの席行って話そうよ」


 朱音の浩介に向けられた嬉しそうな表情を見ると、先程までの嫌な気持ちが徐々に薄れていく。


 しかしそのとき、豪弥が浩介の肩を乱暴に押し、強引に割り込んできた。


「美鏡 朱音ちゃんだよな、昨日はすぐ帰っちゃったから誘えなかったんだけどよぉ。放課後親睦会やるから朱音も来いよ」


「そうそう、こんな陰キャほっといていいからさ」


「まず俺らと連絡先交換しね?」


 豪弥たちは一瞬にして朱音を取り囲んでしまう。


(なんなんだよ……なんでお前らはそうも自分勝手になれるんだ?)


 浩介の中で怒りが渦巻く。


 しかし同時に考えてしまう。学校という空間において陰キャぼっちの自分には一切の力がない。


 確かにネット上ではアカネとは仲良しだ。誰も邪魔をすることはできない。しかし、リアルにおいては違う。朱音はクラスで人気者になりうる存在だ。それに対して自分はバカにされている陰キャぼっち。


(ほんと俺、バカみたいだ……アカネとリアルで会えて、昨日はあんなふうに話せたからって調子のって)


 そう思いかけた瞬間……。


「は? なに自分勝手なこと言ってんの?」


 背筋がゾッとするような声で朱音が言った。


「連絡先? 大切な友達と話してるの邪魔するようなヤツとするわけないじゃん。ホント不快だから」


 心底軽蔑するような目で睨みつけられ、豪弥たちは言葉を失う。


「ごめんねコウ君、わたしの席行って話そ?」


「あっ、あぁ、行こう」


 そう言うと、朱音は浩介の手を握って彼女の席へと歩き始めた。


「「「…………」」」


 その後も豪弥たちは、楽しそうに会話を交している2人を見つめて悔しそうに体を震わせることしか出来なかった。

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