第2話
翌朝、学校へ登校すると、予想通りの人に絡まれた。
僕の机を手のひらで叩き、ニヤリと笑う。
彼女の口にはラムネ菓子、
恐らくココアシガレットと見られるものが咥えられていた。
「やぁ宇賀ちゃん。昨日はどうも」
金髪美人の怖い人、花村紫だった。
「お、おはよう、花村さん」
「こっちも手ェ出さねェからテメーも黙っとけって話。分かる?」
「な、何のことですか。僕はさっぱり」
「あァン!? ……あ、いや待て、そういうことか?」
「そうですよ、何もなかったんです」
「テメーおもしれェな。そうだな、何もなかったわ」
キャハハ!
と嬉しそうに笑い声を上げ、机をバンバンと叩く。
満足したらしく、彼女は鼻歌交じりに窓際の席へと向かった。
そう、何も見てないし何もなかった。
彼女が何をしようと、それは彼女の意志で行われていること。
僕が止めようだなんておこがましいことなんだ。
僕が守るべきは森川先輩との関係だけ。
大切な恋人を守り抜かなければ。
『ごめんね。今日は生徒会の仕事があって一緒に帰れないの』
ある日の放課後、スマホにそんな連絡がきた。
先輩が忙しいのは僕も十分承知している。
こういうときにかける言葉は――。
「大丈夫だよ。頑張ってね……っと」
彼氏として正しい選択かは分からなくても、正直に気持ちを伝える。
きっと、それが大事だと僕は思っている。
「なァ~にを頑張るんだね、宇賀ちゃん」
ズシンと肩に重みがのしかかってきた。
今朝絡んできた金髪美人の花村紫。
僕の肩に肘を乗せてニヤニヤとスマホ画面を覗き込んできた。
「ちょっと紫、やめなさい。まだ童貞くんなんだから」
後ろから呆れる声が飛んできた。
どうやら花村さんのご友人も同伴のようだ。
一緒になってスマホの画面を覗く彼女は
花村さんといつも一緒に行動しているクラスメイトだ。
彼女は画面を覗くなり軽く驚いたように目を開いた。
「うわぁ、真面目過ぎない?」
「だからアタシたちが絡んでやらなきゃなんねーのよ」
他のクラスメイトたちは絡まれる僕を横目にどんどん廊下の先へ向かって行く。
それもそうだ。花村紫に目をつけられたら大変なことになる。
みんなそれを知っているからだ。
「せ、先輩は忙しいんです。たまに一緒に帰れないときだってあります……」
小声で反論すると、花村さんと園田さんは顔を見合わせて大笑いした。
花村さんの笑い声は特に清々しくもあり、悪辣でもあり、何と言うべきか。
「イイモノ見せてやるよ、宇賀ちゃん。今日はアタシらと帰ろうぜ」
「紫ったら鬼畜よね」
「そうでもねェさ」
小柄な僕はスタイルのいい美人女子生徒に挟まれながら、
なぜか下校を共にすることを強制させられるのだった。
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