鏡の部屋
天川裕司
鏡の部屋
タイトル:鏡の部屋
なんか最近、見られてる気がする?
部屋に居ても、町中に居ても、何か視線を感じる。
「なんだろ…?」
と思いながらもそれほど気に留めず、
とりあえず日常生活を続けていく。
(自分の部屋)
「すみません、今日はそんな感じでお休みさせて頂けたら…」
ある日、気分的に落ちていたので、
どうしても会社に行く気にならず、
仮病を使ってズル休みした。
まぁ一般的にはダメなことだけど、
結構こんな事してる人は多いと思う。
「ふう。今日はゆっくり過ごそうかな」
とりあえずお茶を入れて落ち着こうとする。
その時、また視線を感じた。
「……ほんと何なんだろこれ…」
いつもより少し強めの視線を感じ、
なんとなく怖い気がした。
顔を洗おうと洗面所に行った時…
「…え、きゃあっ!!」
鏡の中から見知らぬ人がこっちを見てた。
思わず鏡から離れ、また鏡の前に立った時、
自分の顔がそこにあった。
「………」
幻覚でも見えたんだろうか?
私は少し前に精神疾患を煩ったことがあり、
その余波が来てるのかと思った。
翌日からまた仕事へ行ったが、
この奇妙な出来事がそれからずっと続き始めたのだ。
窓の暗い車の横を通ると、その窓ガラスに誰かが映ってる?
本棚の開き戸のガラスにも、向こうが暗ければ
私の後ろに誰かが居るような気がした。
会社でお茶を入れる時でもポットの表面に
光に反射する形で誰かが居るように思う。
部屋に帰っても、つけてない真っ暗なテレビ画面に
誰かが居たようにも思う。
「もう何なのよ!」
また狂いそうになってしまった私。
でも何とか挽回し、日常生活に返ろうとした。
そしてこんな時は寝るのが1番だと、ぐっすり眠った。
「…ああ、よく眠れた♪」
昔、不眠気味になった事もあったので、
眠れる事に心の底から感謝する。
そして起きてベッドから出て、
顔を洗いに洗面所へ行った。すると又、
「きゃあっ!」
あの見知らぬ顔がこっちを見て居た。
女の人。
でもその人は私を見ておらず、
鏡の向こうで化粧をし終えたかと思えば、
スッと立ち、そのまま玄関まで行って部屋を出て行った。
鏡を見てただけなのに、
その人が玄関を出て行く場面まで見えたのだ。
「……なに、なんなのこれ…」
鏡の前に棒立ちの私。
きっと幻覚を見たんだ…そう思い込むことにし、
改めて顔を思いっきり洗ってタオルで拭き、
気分を変えようと街中へ出ようとした。
今日は仕事が休みだから、
部屋にこのままずっと居るのはもったいない。
でも…
「…あれ?なんで?」
玄関のドアのノブをいくら回しても開かない。
「ちょっと…!」
ガチャガチャガチャガチャ…ずっと繰り返す。
「ちょっと壊れてんのこれ!?」
結局、私はその部屋から出る事が無かった。
それから数年が経ち、私は今、
自分が置かれた立場を充分に理解して居る。
鏡の前に立つと、いつも決まってあの女が現れる。
あの女は現実で生活して居る。私になどもう目をくれず。
いつも通りに顔を洗い、
化粧をして、部屋を出て行くあの女。
私はここにずっと居る。
ここから出られる事はあるんだろうか。
動画はこちら(^^♪
https://www.youtube.com/watch?v=o0qUgk5WmDw
鏡の部屋 天川裕司 @tenkawayuji
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