25 コラボの反応



『は〜い、うるるんのDチューバーニュースの時間です。今回はダンジョンおじさんの話題ですよ〜』


『先日、アイドル系Dチューバーの天之川ミミミ、ユウネ、インリン・ジョーンズが平和島ダンジョンでのコラボ動画を上げたのですが、なんとそこにダンジョンおじさんが登場し、平和島ダンジョンを攻略してしまいました』


『動画の最初の説明で、コラボは本来、以前の吉祥寺ダンジョンでの一件から不仲説が流れた三人の仲直り企画として立ち上げられたのですが、天之川ミミミがダンジョンおじさんとの接触に成功し他の二人にも会う機会をとコラボへの参加を声がけ。ダンジョンおじさんの提案で平和島ダンジョンのガチ攻略が敢行されたという流れだそうです』


『事前に説明しておきますと、ダンジョンおじさんが補助と回復に特化したS級覚醒者と聞いて、ネットでの反応は否定的な意見が多くなっていました。回復はともかく、補助系の能力者は歓迎されていない雰囲気があったのです』


『ところが動画の中では信じられない光景が展開されました。コラボした三人のDチューバーはB級。しかも戦闘に特化しているのはユウネのみという状況だったのに、およそ六時間での攻略に成功したのです』


『ダンジョンは現れた時間が長くなるほど階層が深くなります。平和島ダンジョンは出現してから約半年』


『同じぐらいのダンジョンでのこれまでの最短攻略時間は、S級が関わったものを含んでも十八時間となります。メインアタッカーが一人という状況でこれを実現したのは軌跡と言ってもいいでしょう』


『これからの補助系覚醒者の評価が変わることになるかもしれませんね』


『それはそれとして、ダンジョンおじさんはアイドル系Dチューバーをなんだと思っているのでしょうか? その辺りが気になったうるるんでした。それではまた、次のニュースで』





検索 #ダンジョンおじさん


『【悲報】ダンジョンおじさん、やらかす』

『アイドル系Dチューバーを酷使してダンジョン攻略とか、ダンジョンおじさんやりすぎw』

『後方腕組ダンジョンおじさんw w』

『しかも解説を入れていく余裕っぷり』

『だけどこれで、ダンジョンおじさんがS級覚醒者ってはっきりわかんだよね』

『魔法剣士、斥候、鉱夫のB級三人を前に置いて自分は補助と回復に徹して平和島ダンジョンを六時間で攻略だからな』

『自殺志願者かな?』

『ダンジョン攻略請負会社とかだと階層が深くなることを覚悟してでも安全マージンを確保して、年単位で攻略するからな』

『あれは儲けを最大限に得る計算もしてるけどな』

『それでも、S級がいないところの攻略ってそういうもんだよな』

『やっぱS級ってすげぇんだな』

『すげぇんだよ』

『だけどダンジョンおじさんは許さぬ』

『必死すぎてユウネちゃんのエロ声がほとんどなかったからな』

『あれはあれで演技を超えた極限の(以下省略』

『それに対してインリンはナイス尻シーンが多かったな』

『ミミミちゃんも、いまは禁じられたスパロ●の乳揺れシーンを思い出したよ』

『鉱夫系が戦闘で活躍できるシーンが存在することを証明した貴重な動画になったな』

『この動画がD省の戦闘講習で使われることになるとかw w w』





「三人に聞きたいんだが」


 スマホでネット上の反応を見ていて思った。


「君たちは、ダンジョンの攻略はしないのかな?」

「「「しません」」」


 にっこり笑顔で断言されてしまった。

 ここはとある高級焼肉店。

 ダンジョン攻略の報酬が入ったので、四人で打ち上げに来た。


「アイドル系Dチューバーはダンジョン内を視聴者に楽しく紹介することを目的としているんです」

「私たちにガチの攻略を期待してる人はいませんよ」

「そうですよ、次郎さん」

「そうか……」


 そういうものなのか。


「それはすまないことをしたね」

「いえ、それはそれで大丈夫です」

「ダンジョンの攻略なんて一生できないと思ってたのに、体験できたから」

「貴重です」

「それならいいのだけど」

「なにはともあれ、これで私たちが仲良くないっていう噂は消えてくれるだろうね」

「だといいのだけど」

「きっとそうなります!」

「まぁ、ちょいちょいコラボすればね」

「今度、宅飲み生配信とかやる?」

「お酒は……飲みすぎると失敗するかも」

「ウーロンハイと見せかけたウーロン茶とか?」

「キャバ嬢手法。でも、飲みすぎるぐらいならその方がいいかも?」

「お菓子がたくさんあれば私はいいですよ」


 そんな風に彼女たちが話すのを眺めながら、私はせっせと肉を焼いたり、ビールを飲んだりした。


 打ち上げが終わり、解散する。

 私はそれぞれ別のタクシーに乗った。

 視線があちこちから刺さっている。

 私に向けられたものもあれば、彼女たちへのものもあった。

 記者とかか?

 スマホで撮影もできるし、区別がよくわからない。

 ともあれ、彼女たちに私のせいで変な噂が付いてしまうのは避けた方がいい。

 どうせ住所はバレているだろうけれど、近くの駅でおろしてもらい、歩いて帰る。


『焼肉美味しかったですね』


 美生ちゃんからメールが来ていた。


『美生ちゃんたちがちゃんと仲良くて安心した』

『えへへ』

『ホントは、ちょっと自信なかったんです。ちゃんとした友達っていままでよくわかんなかったから』

『でも、もしかしたら二人とちゃんと友達になれるかもって、今日、思いました。次郎さん、ありがとう』


 すぐに返信できなかった。

 友達とはなにかなんて、私にも答えはない。

 いまだに記憶を全て取り返したとはいえない。

 小中高、そして大学、社会人、その頃に知り合った人たちは友達か? クラスメートか? よく会っていたなら友達なのか?

 いや、そんな難しい意味なんて必要ないのか?


『それはよかった』


 私はただそう返し、アパートへの道を歩いた。





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