第41話 極東アジア日本総司令官室
極東アジア日本総司令官室
十二時十分。
GHQ本部「極東アジア日本総司令官室」である。
山田氏が『コーヒーの出前箱』を提げてドアーをノックする。
部屋から女の声が。
「Come in!」
山田氏が笑顔でドアーを開ける。
「ハ~イ」
受付秘書のナンシー・アサダが山田の顔を見て、
「???」
山田氏、
「閣下にコーヒーをお持ちしました」
ナンシー、
「カッカ?」
山田氏は司令官の部屋を指さして、
「キング?」
ナンシー、
「オウ、マーシャル。・・・ドウゾ・・・? ヨシコハ?」
「今日は、お休みよ。私がママ」
「ママ?」
「イエス。ショップのママ」
「オウ・・・」
ナンシーは司令官室のドアーをノックする。
司令官室から渋い声が。
「Come in」
ナンシーがドアーを開ける。
昼食を終えたマッカーサー最高司令官が両足をテーブルに上げ、老眼鏡を掛けてリラックスしながら新聞(New YorkTimes)を見ている。
口には例のお気に入りの「コーンパイプ」が。
司令官は「老眼鏡」をずらしナンシーを一瞥する。
ナンシー、
「Coffee has come.」
司令官、
「Oh,Thank`s .」
山田氏が出前箱を提げて部屋に入って来る。
山田氏は初めて目の当たりにする『マッカーサー最高司令官』を見て極度に緊張する。
山田氏、
「コッ、コーヒーをお持ちしました」
司令官は山田氏を見て軽く笑顔で、
「・・・ゴクロウサマ。ドウゾ、コチラエ」
山田氏は身体を斜に構え、
「お邪魔します」
山田氏は日劇の小道具係りから借りたカツラに、軽く指を通し司令官のテーブルに近づく。
出前箱からコーヒーセットを一つ一つ取り出しテーブルに並べて行く。
山田氏の手が震えている。
司令官はジッと山田の顔を見詰めて、
「ステキナ、ヘアースタイルデスネ」
山田氏は驚き、
「えッ! サッ、サンキュウーベリーマッチ」
山田氏は緊張して司令官の顔を見る事が出来ない。
司令官、
「ゴイッショニ、オハナシデモシマセンカ?」
山田氏、
「あッ、いや・・・まあ・・・」
すると、またドアーをノックする音が。
「Come in!」
ドアーが開き、ナンシーが顔を出す。
「Commander! Reporter and Interpreter have come.」
司令官、
「? OK. Come in.」
周明氏と堀田氏、首藤氏の三人が司令官室に入って来る。
三人は司令官に軽く会釈をする。
そして、まず周明氏が用件を話す。
「Commander,Excuse me.Reporter has come to get a comment from a commander.」
司令官は周明氏を見て、
「Oh Yes.Come on.」
司令官はソファーを指さす。
周明氏と堀田氏がソファーに近づき、司令官を見て軽く会釈して座る。
山田氏は司令官のテーブルの上のコーヒーセットをソファーのテーブルに移す。
司令官は山田氏の動きを見て、
司令官、
「アリガトウ。アナタモ、ソコニ、スワリナサイ」
山田氏は少し驚いて、
「えッ、宜しいんですか?」
「オウ、ミンナ、トモダチデス。ドウゾ」
山田氏はソファーの隅に、身体を小さくして腰を下ろす。
周明氏、
「Commander , ・・・and the painter who says that he'd like to draw commander's portrait today have come, too.」
司令官、
「Oh,OK ! It's welcomed.Draw well.」
するとまた、ドアーをノックする音。
「Come in!」
ナンシーがドアーを開け,
「Painter and a tailor have come.」
司令官、
「Oh, Please.」
ナンシーが杉浦氏と岡田氏を部屋に通す。
司令官、
「・・・? Tailor ?」
周明氏、
「Costume check.」
司令官、
「Woow Yes.」
またドアーをノックする音が。
「Come in.」
ナンシー、
「It's a Furniture.」
司令官、
「Furniture ? OK,OK, Come on.」
ナンシー、
「Thanksful.」
ナンシーが肥田氏を部屋に通す。
ナンシー
「There is no time.Please make it early!」
周明氏、
「OK,OK・・・」
ナンシーが司令官室を出て行く。
周明氏はそれを確認して、肥田シに眼で合図する。
司令官室の内側のドアーを静かに施錠する肥田氏。
周明氏が静かに、
「では、始めましょう。まず、杉浦さん。デッサンをお願いします」
杉浦氏はスケッチブックを持って立ち上がる。
すかさず岡田氏が司令官の身なりを整える。
肥田氏が司令官の後ろに回り、手拭い(テヌグイ)で司令官の口に「猿ぐつわ」を噛ます。
手際良く後ろ手を縄でしばる肥田氏。
司令官はあまりの突然で何が起きたのか分らない。
肥田氏は司令官を落ち着かせる。
司令官が「猿ぐつわ」の口で何か喋っている。
「ウー、ウウー、ウウウ・・・」
堀田氏が応接テーブルの上に『十通の直訴状』を静かに並べて行く。
周明氏は首藤氏に目配せをする。
首藤氏は司令官の机の前まで歩み寄り、電話の前に立ちふさがる。
司令官室の壁の時計は「十二時四十三分」を指す。
周明氏は司令官の前に進み寄る。
司令官室をノックする音。
「コンコン」
「コンコン」
「コンコンコン」
「コンコンコンコン」
音は徐々に大きく成る。
ナンシーの声が。
「Commander ! Did anything happen? Commander ! Hey Commander !」
ノックの音が激しく廊下に響く。
「ドンドンドンドン」
ナンシーが廊下から焦りながら大声で司令官を呼ぶ。
「Hey Commander ! Did anything happen ! Commander !」
「参 考」
ナンシー・アサダ(連合軍最高司令官室・秘書・カンザス州出身・マッカーサー司令官の親戚である)
つづく
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