第40話 松澤病院院長室

   松澤病院院長室


 院長室のテーブルにサンドイッチと四人分のミルク、紅茶が一つ置いてある。

内村院長、西丸医師、畑婦長、鮫島看護婦、朝倉看護婦の五人が、黙って壁の時計を見ている。


時計は十二時三十分を指している。


畑 が電話を見詰めて、

 「・・・連絡が来ないですねえ」


四人が畑 を見る。


西丸が、

 「誰から?」


畑、

 「えッ?・・・あの時も、兵隊さんの偉い方達はこんな感じで連絡を待っていたのかしら」


西丸、

 「死者達(特攻隊)の連絡か・・・」


内村はジッと壁の時計を見詰めて固まって居る。


鮫島、

 「連絡なんて来ないですよ。玉砕しに行ったんだから」


西丸、

 「連合軍に捕まって身分を吐かなければ連絡は来ない」


内村は、おもむろに口を開く。

 「・・・上手く行っている筈だ」


四人が内村を見る。


西丸、

 「? なぜ分るんですか」


内村は西丸を見て、

 「大川周明だからださ・・・」


四人が沈黙する。


畑が、

 「あ、そうだッ! 作戦参謀の首藤さんも入ってわ」


内村、

 「歴戦の兵達(ツワモノタチ)と練りに練った作戦だ。必ず成功する。日本の将来がかかっているんだ」

                          つづく

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