第38話 到着! 配置確認
到着! 配置確認
丸の内三丁目郵便局前である。
十一時四十七分。
軍用トラックが静かに停まる。
村瀬巡査が運転席から荷台を覗き、
「先生、着きました」
「着いたか・・・。よしッ、皆、行くぞ! 計画通りに行こう」
村瀬巡査、
「で、ここで降りるのは?」
周明氏、
「私を入れて六人。一人はGHQ本部の搬入口」
「搬入口?」
「家具屋だから一人は搬入口から入ってもらう」
「ああ、家具の搬入ね。あそこなら、俺も八階まで付いて行けます。その方が安心だ」
「それは心強い。ねえ、肥田くん」
「そうですね。村瀬さん、宜しくお願いします。」
「ガッテンだ。で、そこの郵便局を左に曲がると第一生命が見えます。それがGHQ本部! 閻魔(エンマ)キングが居る所ですよ」
周明氏は村瀬巡査を見て、
「エンマキング?・・・あ〜あ、元帥か。で、左ね。分った。有難う」
「マッカーサーの部屋は八階のエレベーターを降りて左一番奥!くれぐれも間違えないでくださいね」
「元帥は居るんだろうね」
「今日は三時から外出です」
「よし。八階左奥だね。皆んな、分かったね。八階左奥ッ! まず、山田さんがコーヒーを持って部屋に入る。少し遅れて私と堀田くん。それから杉浦さん。首藤さん、岡田さん。そして、最後は肥田くん。この順番だ」
七人が、
「了解!」
「あッ、それから山田さんが喫茶店役ですよね。はい、これ」
村瀬巡査は助手席に置いてある『出前箱』を山田氏に渡す。
「何これ!?」
「コーヒーの出前箱! これに入れてコーヒーや菓子を運ぶんですよ」
「でもこれ、中華後楽って書いてあるわよ」
「裏にすれば分らないですよ」
「あら、アンタ、まんざらじゃないわね」
村瀬巡査は山田氏に向かって右手の親指を立ててガッツポーズ。
「あッ、皆さん通行許可証は持ってますよね」
七人全員、手に取って村瀬巡査に見せる。
「よしッ、OKッ! じゃッ、レッツ ゴー!」
六人がトラックの荷台から一人ずつ降りる。
村瀬巡査が山田を見て、
「あッ、山田さ~ん。出前箱!」
「あッ、そうだ!」
「シッカリして下さいよ。日本人の代表なんだから」
「オカマの代表よ~ッ!」
「それから喫茶店の名前はマロニエ。これも間違えないで下さい。マロニエッ!」
「マロニエね。わー、緊張するわ~」
つづく
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