第1話:君との意外な共通点

「ねえ、星、好きなの?」

 学校一の美少女と言われている石原星華の声がした。僕も、少し可愛いなと思っている。そんな石原さんが誰かと話しているようだ。とても気になる会話だが、そんな輝かしい会話を邪魔してはいけない。そう思い、荷物を持って教室の扉を目指した。


 「ねえ……無視しないでよ。宇辻くん!」

 僕はビクッと肩を上げる。石原さんが僕の名前を呼んだ。

 「そんな驚くことじゃないでしょ!」

 振り返ると、石原さんが笑っていた。目があった瞬間、僕の心臓がドクンと跳ね上がった気がした。それを感づかれないように目をそらし、あたりを見回すと2人きりだった

 「星、好きなの?」

石原さんは首を傾げて聞いた。

「うん、好き、だよ」

僕は言葉を詰まらせながら答えた。久しぶりの会話で、しかも美少女との会話。とても緊張している。


 「でも、なんで分かったの?」

僕は平静を装い、緊張を隠しながら聞いた。

「だって、それ望遠鏡でしょ?夜に、星高山で星見てるの知ってるよ」

 石原さんは、僕が恥ずかしくてみんなに隠していたことを知っていたようだ。からかうような笑みを浮かべて、こっちを見ている。

 「私も星大好き!なんか神秘的だよね。誰も知らない秘密をたくさん持ってそう!」

石原さんは、大きく手を広げて言った。


 僕は、学校一の美少女との意外な共通点を見つけてしまった。仲間がいたようで、とても嬉しかった……しかし、共通点を見つけても、お近づきになれるような勇気も気力もないと気づいた。明るい希望が一瞬にして砕け散った。


 僕はこれ以上いても気まずくなると思い、バスの時間が近いことを伝えた。そして、教室を出ようと扉に手を伸ばす。

 「あ!ちょっと待って。今度一緒に流星群見に行こうよ!」

石原さんが思いもよらぬ言葉を言った。僕は驚いて、開いた口が塞がらなかった。

「あ、そうだ!LINE交換しよ!」

 言われるがままに、カバンからスマホを取り出し、石原さんのスマホに映ったQRコードを読み取った。


 トントン拍子で話が進んで、石原さんのLINEをゲットした。しかも、一緒に星を見るという、いわゆるデートまで決まろうとしている。こんな夢みたいなことあるだろうか。少し考えたが、石原さんの笑顔に嘘偽りなど全くなかった。

 「また、連絡してね!」

「うん。じゃあ、また」

と頭を下げて教室を出る。僕はスマホ片手にガッツポーズをした。

 いつもは歩くバス停への道をハイテンションで走っていく。重たい荷物も軽く感じた。


 僕はバスの中で頬をつねり、LINEの連絡先を見て現実かどうかを確認した。バスの中で、どうメッセージを送れば自然かと考えたが、結局、夜になっても思いつかずにスタンプを送ることにした。


 その日の夜、あいさつのスタンプを送ると、可愛い犬のスタンプが帰ってきた。

 そして、星を見に行く日を決めることに。1週間後の流星群の日に星高山で見ることにした。いつも僕が星を見ている麓ではなく、山頂付近にすることにした。

 山頂で見る、きれいな星空をイメージする。とてもきれいだ。しかも横には石原さんがいる……


 しかし、だんだんと石原さんを好きになっていくことを認められない自分もいた。クラスのみんなにからかわれるだろう。もし、学校中に知れ渡ったら?そう考えると胸がざわついた。


 もし告白して、付き合うとなったら、もっとからかわれるだろう。「お前なんかが何で、石原さんと付き合ってるんだ!」なんて言われるかもしれない。


 でも、好きという気持ちを伝えたい。


 この矛盾が頭をギュッと締め付けた。


 考えて、考えて、考えて、その日の夜は眠れなかった。


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星の数ほど笑いたい 平井海人 @kaito022349

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