第81話

「ごめんなさい、ありがとう、助かりました……」


「子供じゃねんだからしっかりしてください」


「はあい……」




危なかった。真守が腰を引いてくれなかったら間違いなく踏み外していた。


ゴロゴロと下に転がり落ちる自分を想像して、恐ろしくなって口を噤んだ。




「ん」


「……?」


「危なかしいゆるちゃんには掴んどくなにかが必要かと思ったんだけど、いらない?」




真守が手を差し出した。


その意味を理解して、ゆっくり手を伸ばし、重ねる寸前で顔を持ち上げる。



悪戯に微笑む目がわたしを映し、「おて」とふざけるから、仕方なく「わん」とノる。


すると真守はわたしの手を奪うように取った。互いの指が交互に当て嵌まる。パズルのようにきっちりと。




「……ふ、ふん〜」


「なにそれ」


「……鼻歌」


「なんで今?」


「な、なんとなく」

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