第70話

「なあに、心配?」


「うん。その子がね」


「……。最近雇った従業員。取引先の社長の娘だからあんま無下にできなくてこれでも困ってる」


「あ、そういうこと。たしかにそれは難しいかもね」



でもそれにしたって真守は基本的に優しいと思う。


まあ、あのファーストインパクトが最悪だったであろうわたしにすら、優しくし手を差し伸べてくれたんだもんね。


真守の優しさは、今に始まったことじゃないか。



飲み干した水のグラスに牛乳を入れ、なんとなく真守の視線に気が付きながらもそのままソファへ直行する。


すると、沈んだばかりのソファがほんの少し浮き上がった。




「あれ、お風呂は?」


「なあ、俺が女に優しくすんのいや?」


「? いやじゃないよ」


「1ミリも?」


「うん?うん」




首を横に倒して、縦に戻した。


「あー、そ」と、薄く開いた唇から小さな声を落とし、すぐにソファから退こうとする真守の手を咄嗟に掴む。

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