果実にひと匙のお砂糖を

第69話

「あーそれでいいよ。よろしく」

「ん?そうだよ」

「今度な。小浪こなみたちも連れて」

「ふたりはだめ。それなら行かねえよ」

「はいはい。じゃあ切るよ。ん、お疲れ」




お風呂を上がると、真守がだれかと通話をしている最中だった。


それが終えると物音で振り返り、キッチンカウンターの奥に立つわたしを捉えた真守が「俺も入ろ」と立ち上がる。



ほかほかの体を冷ますために、ウォーターサーバーから冷えた水を注ぎ、ちびちびと飲みながら、じぃーーっと真守を目線で追う。


で、お風呂の用意を持ち自室から出てきた真守にズバリ聞いてみた。




「ねえ、今の電話の相手のことたぶらかしてるの?」


「んなことしねえわばか」


「でも今の人真守のことが好きなんでしょ?」




スマホから漏れていた声は可愛らしい女の声だった。


ハッキリとは聞こえなかったけれど、おそらく〝ふたりでご飯に行きましょう〟のお誘い。


断ってはいたけれど、なんだか優しい口調だったし。

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