第71話

「えっ、なに?」


「なんも」


「怒ってる?」


「怒ってない。つか今のどこに怒る要素があんの」


「わたしが、真守が女に優しくするのがいやじゃないって答えたから……?」


「それで怒ったらやべえやつじゃん」




……でも、変だよ?


怒ってる、というわけでもないけれど、不貞腐れてるというか……、なんていうか形容しがたいけれど。



やんわりと手を離された。お風呂へ向かう真守に、「え、待って」とわたしも立ち上がる。


が、勢いよく立ち上がったせいでローテーブルをガタンと揺らしてしまい、その拍子に牛乳がほぼ満タン入ったグラスを倒してしまった。


カーペットを敷いていなかったのは幸いだけれど、ローテーブルからぼたぼたとこぼれる白い液体は容赦なく床を汚していく。

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