第64話

調子に乗った言い方になってしまった。


パンツのウエスト部分、内側に4本指を突っ込み、残った親指で挟む。


顔を上げ、真守の双眸の奥に静かに煌めく星の中に、流れる星はないかと目を凝らす。



けれど、見つける前に視界から星が消えた。後頭部を押され、真守の胸に衝突したからだ。


そして腕は、控えめに背中に添えられた。


わたしも慌てて真守の背に腕を回し、ぎゅううっと。抱きしめる腕で真守の存在を確かめる。





「……真守だ」


「俺だよ」


「明日の夜は、いる?」


「うん。早く帰ってくる」


「一緒にご飯食べられる?」


「食べれるよ」


「なにがいい?」


「なんでもいい」


「なんか言ってみて」


「まじでなんでもいい。ゆると一緒に食えんなら」


「塩の肉じゃがでも?」


「それすげえ推すな。食べてみたいかも」


「言ってみただけだよ」


「なんだよそれ」




顔は見えない。でも優しく降り注ぐ声色が、やわらかく目を細めているのを教えてくれる。


耳を澄ますと、胸からとくとくと音が聴こえる。


鼻をすんと働かすと、真守ともアルコールともお酒とも違う、なんだか大人の匂いが混ざっていることに気付いてしまった。


そりゃあ社長たちの集まりだ。高級クラブに行くこともあるだろう。

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