第63話

真守だ。ちゃんと真守が帰ってきた。


ほんの少しだけアルコールの匂いがする。でも酔っている気配はない。


無性に真守に抱きつきたい気持ちになるけれど、きっと剥がされちゃうから、我慢して真守の真後ろを歩くひっつき虫になる。



するとリビングに入ってすぐある箇所を見て停止した真守。額が背中にぶつかった。痛い。




「これ俺の布団?」


「うん」


「もしかして、これ被って俺のこと待ってたとか言う?」


「うん」


「……」


「……だって真守の匂いがするから、なんとなく真守が隣にいる感じがして……」


「ゆる」


「勝手にごめ」


「それはさすがに可愛すぎるわ」




てっきり怒られるかと思ったけれど、なぜかお気に召した?らしい。


振り返り、わたしの頭をくしゃりと撫で、猫と戯れるような優しげで穏やかな表情を向ける。


手が離れると、真守は腕のボタンを片手で器用に外していく。



そんな真守に1歩踏み出せば、真守の体とごっつんこした。




「どしたの」


「……うん」


「ゆる?」


「……真守がいない間寂しかった」


「ん、ごめん」


「……ぎゅってしてくれたら、元気になるかもね?」

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