逆光の陽だまりに見抜かれる

第57話

優しい呼びかけで目が覚めた。


輪郭がぼやけた柔らかな日差しがおぼろげに映る。その向こうで透けたように見える綺麗な顔が、わたしを見下ろしていた。




「まもりおはよー……」


「おはよ。ごめん起こして。急遽早く出ないといけなくなったから一応声かけとこうと思って」


「ん、もう起きる……」


「いいよ寝てて」


「起きる……」




まだアラームが鳴る前の時間。なのに、アラームで強引に起こされるより、真守に優しく呼びかけられるほうがすんなりと起きられるのはどうしてだろう。もちろん眠いに違いはないけれど。


布団を剥いでベッドから足を出す。


真守と色違いのスリッパを踏んづけて立ち上がり、「まじで寝癖つかねえよな」と笑い感心する真守の後ろを、目をこすりながらとぼとぼと追いかける。

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