第55話

「なんかってなに?なにもないよ」


「そ?やけにいっぱい喋るから。隠したいことでもあるのかと思ったわ」


「ないよ」


「例えばあの男と偶然再会したとかも?」


「、」


「で、また関係を持ちかけられた」





背伸びした心臓がぶるぶると震えを起こしだした。


力のある視線が張り付いていることには気付いているけれど、その真守の目を見ることができない。



ブルだよ。ど真ん中大的中だよ。なんでわかるの。わたしなにも言ってないはずなのに。



ほんの僅かな時間、黙ってしまったわたしから肯定の意を感じ取った真守は、「やっぱり」と息と一緒に吐き捨てるように台詞を吐いた。





「っ、来ただけ!なにもしてない」


「じゃあ変に隠さなくてもいいだろ」


「……それは、そうだけど」


「ゆる、やめとけ。それなら俺が、」


「っ大丈夫、しないよ。また真守に怒られるのやだもん。それにバイトも始めたし、仕事も、懲りずに探す」




うん、だめ。絶対だめだ。これ以上真守に迷惑をかけられない。


今こうしてわたしのそばにいてくれて、さら真守のお家に住まわせてくれているだけで幸せだ。


じゅうぶんすぎるほど助けてもらっているのに、わたしが余計なことをしたら、優しい真守のことだ。心配を掛けて、世話を焼かせてしまう。


わたしがいらないと言っても、きっと真守はしてくれる。

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