第46話
「ゆるちゃん。今お客さんいないし、お外掃くのお願いしてもいい?」
「はい!」
「ありがとう。寒いから上着羽織っていってね。よろしく〜」
仏頂面の店主とは真逆に、いつもにこにこ笑みを浮かべている奥さん。慈愛に満ちた優しげな眼差しに、おばあちゃんの面影を薄らと感じる。
言われた通り、ほうきとちりとりを持って外へ出た。
15時過ぎ。店の前を行き交う会社員がちらほらいるけれど、お店に入ってこようとする人は悲しいことにひとりもいない。
今のうちだと、びゅんびゅんと風が吹き抜ける中でこまめに葉っぱやゴミを集めていると、「すみません」と背後に声がかかった。
「はい」
「今の時間は営業中で、……白石さん?」
「? あ」
声をかけられ振り向くと、スーツ姿の男が立っていた。
首元まで留められたボタン、それを隠すように結ばれたネクタイ。
それを見て、どれだけ暑かろうと寒かろうと、学校での彼はいつも容姿端然であったことを思い出した。
肌が白く透き通っていて、どこか儚げな顔に在る涼しげな瞳はなにを考えているのか簡単に読み取ることができず、同級生からは一目置かれた存在であった彼。――
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