第38話

「ま、なにがあってこうなったのかは知らないけど、あんまり敵作んないようにな」




まもりの手のひらが頭に乗っかる。


乱雑に掻き乱すのに、乱暴さは微塵も感じない。それはきっとまもり自身から、優しい〝陽〟のオーラを感じるから。


まもりの手のひらを掴んで退け、片手で髪を整えながら、背の高いまもりを見上げる。




「まもりって優しいね」


「そ、俺は優しいしかっこいいからモテんの」


「うん、すっごくモテそう。だって優しいしかっこいいもん」


「いや今のは否定してくれてもいいところなんだけど?恥ずいだろ」


「ねえ、これからまもりのこと見かけたら話しかけてもいい?ていうかお友達になりたい。なって」




ぐっと詰め寄る。


すると綺麗な二重の目をまあるく開き、「ふは、なんか懐いてる?」と笑うから、「だめ?」と聞き小首を傾げると、「いいよ」とあっさりOKを出してくれた。




「やった。じゃあ次はこのズボンとベルト返しに行くから無視しないでね」


「はいはい」


「おまえだれ?とか言わないでね」


「あーもし逃げたらごめんな?」


「やだ。そんなことされたら追いつけなくて泣く」


「ふ、嘘だよ。逃げない」


「ほんと?」


「たぶん」


「もう!」

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