第37話

誰かに嫌われること、疎まれることには慣れているけれど、慣れているからといってなにも感じないわけではない。


自分にも原因があることはわかっているけれど、それでも他人から向けられる悪意や嫉妬、棘が剥き出しになったままの言葉に、悲しみや苛立ちを覚える。


だから今日のこれだって、さっきまもりには『へーき』なんて答えたけれど、ちっとも平気じゃない。わたしはそこまで強くない。ノーダメージに見えるかもしれないけれど、そんなわけがない。




「……ありがとう」


「ん?」


「まもりありがとう!」


「ああ。ん、どういたしまして」




でも、今日のわたしはまもりという人間に救われた。


まもりのおかげで、〝えっちした男に彼女がいて、制裁としてスカートを切られた〟というよくないエピソードに、〝初めて喋った知らない先輩が、困っているわたしに体操ズボンとベルトを貸してくれた〟というエピソードを並べることができた。


まもりが、幸福を与えてくれた。

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