第29話

真守はそんなわたしに「はいはい、伝わってるよ」と呆れたように笑う。


そうして、綺麗な二重の瞳を細め、薄い唇を両端持ち上げた。美しい三日月を描いた口元に、優しさが滲む。



可愛いタイプでもワイルドなタイプでもない。だからって中性的かと聞かれるとそういうわけでもないけれど、万人受けするタイプの真守には、不意にやわらかな色気が垣間見える。


そんな真守に、わたしは今日も幸運をもらっている。





「へへ。幸せ。真守のおかげでたくさんいいことが起きる」


「言ったろ?俺といればゆるの不幸なんて吹っ飛ぶって」


「うん。真守はすごいね」




本当にすごい。辛いことがあったはずなのに、真守のおかげでちゃんとわたしがわたしのまま生きていられてる。



でもね、これは今に始まったことじゃないの。


あの頃、わたしがほんの少し尖っていた頃。


真守と、初めて出会ったあの日から、わたしは真守に救われている。

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