第26話

「え、もしかしてわたしが迷ってたから……?」


「まあ、俺もなに食べたいか決まってなかったし。腹減ってるからふたりで3つくらい余裕だろ」


「でもわたし戦力外だよ……?」


「さすがに俺とゆるで綺麗に2等分とは思ってねえよ。ゆるはちょっとずつ好きなだけ食べればいいじゃん。残りは俺が食べるから」


「……ねえどうしよう、真守が輝いて見えるよ。ありがとまもたん……」


「まもたんやめろ」




真守ってこんなにも優しくてできた人間なのに、もう長い間恋人ができていない気がする。


わたしが恋愛に興味がなさすぎて、いわゆる恋バナってやつをすることがないから、真守の恋愛事情を知らないだけなのかな。


ただのお水を飲む姿ですら絵になる。今日だって、何人もの人たちが真守を振り返っていた。真守に向ける目をハートにしている人もいた。





「……」


「ん?」


「真守にはどうして恋人ができないんだろうって不思議に思って」


「できないんじゃなくていらねえの」


「どうして?」


「俺にもいろいろあんの」


「ふうん……」




ふうん、なんて愛想のない相槌を打ってしまったけれど、今はわたしと一緒に住んでいることが最大の理由かもしれない。


でもそんなことはわたしには言えないだろうし、無神経なことを聞いてしまった。



真守に恋人かあ。……恋愛なんて、わたしにはよくわからないな。

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