第16話

ただのサラリーマンでないことや、一緒にいる時にかかってくる電話には常に真守が上司の振る舞いをしていること。


普段の服装は一般庶民と変わらないけれど(失礼)、仕事終わりにそのまま会う時は、皺ひとつ見当たらないお高そうなスーツ、磨かれた美しい革靴、時計や仕事用の鞄は高価なブランド物を身につけていることなどから、もしかして真守ってすごくお金持ち?ていうか社長だったりして、なんて思っていたこともあったけれど。




「真守って社長?」


「うん。言ってなかったっけ」


「……ウン」




25歳にして社長。小さなお顔に美しく整列する全てのパーツがSランク。柔らかさを演出する澄んだ黒髪に、モデル級に長い手足。


さらにはわたしのような不幸な女をそばに置いてくれる懐の深さ。そして、神さまに気に入られし幸運の持ち主。



……なるほど。真守ってスーパー人間だったんだ。わたしとはまるで生きている次元が違う。




「……」


「なに」


「今日から真守社長って呼んだほうがいい?」


「まじでやめろ」




なんでよ。真守ってば恥ずかしがり屋さんなんだから。

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