第14話

「……わたし、朝起きるの苦手だよ……?」


「知ってる。アラーム1時間以上鳴らしっぱなしで隣から壁ドンされてたんだろ」


「……掃除とお部屋の片付けも上手にできない」


「それも知ってる。つか掃除は俺がするからいい」


「……お料理は、まだマシなほう」


「マシってか上手いよ。俺ゆるの飯好き」


「……マッサージなら少しは、」


「ばあちゃんで磨いたゆるの特技な。ぐだぐだ言ってるけど、それはもう決定ってことでい?とにかく今日は俺んち来てゆっくり寝ろ」




立ち上がった真守の手をぎゅっと握って引き止める。


「本当に、」とまだ理由を探すわたしに、真守の反対の手が頭の上に乗せられる。




「俺がゆるをひとりにさせたくねえの。頼むよ」




その場にしゃがんだ真守と視線が交わる。切実に願いを乞うような声色を放つ。


……ずるい。そんな風に言われちゃ、断れない。



目線を彷徨わせる。けれど最後は真守にたどり着き、わたしを見据えたままの瞳にゆっくりと頷いた。


すると真守は安心したように薄く笑みを広げる。




「よし、決まりな」




白石しらいし ゆる。23歳。不幸と共に生きる女。


けれどそんなわたしは、今日からこの真守と、一緒に住むことになった。

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