第7話

会社から3駅先の駅で降りて、駅から徒歩20分歩けばわたしの住んでいるアパートが見えてくる。


ひとり暮らし女子に人気のオートロック機能は備わっていないし、わたしの部屋は1階。


でも今まで下着泥棒に遭ったことがなければ、不審な人物が部屋に訪れてきたこともない。




いつものように102の部屋の前で立ち止まり、鍵を挿し込み右に回……す?あれ、軽いな。逆だったかな。


今度は左に回してみると鍵が掛かる音が鳴った。鍵を抜いてドアノブを引っ張っても、当然鍵が掛かっていて開かない。


……ってことはさっきの方向で合っていたんだ。うん、そうだよね、いつも帰ってきたら右に回すもん。


ということはだよ?鍵を掛け忘れていたことになる。


毎朝どれだけ急いでいても2回はがちゃがちゃと確認するのに。危ないなあ、しっかりしてよわたし。




改めて鍵を挿し込み右に回せば、本来鳴るべき音が鳴った。


とにかく壊れているわけじゃなくてよかった。今のわたしには修理費なんて余計な費用、とてもじゃないけど払う余裕ないもん。




古い空気が充満したシンとした空間に「ただいま」をプレゼントする。


もちろんお返しなんてないけれどいいの。


この空間は、いつだってどんなわたしでも受け止めてくれるから。

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