第6話
嘘ではないよ。
……まあね?真守以外では、今の会社の人たちだけだから、プライベートというカテゴリーに分類したとすれば、たしかに真守だけではある。
暴かれる前にごほんとわざとらしく咳をしてこの場を切り抜ける。
「以上です。ごめんね仕事中に」
『いやそれはいいけど。今からどうすんの』
「どうもこうも、ひとまず家帰って寝るよ。だからおやすみ。真守はお仕事がんばってね」
即座にスマホを耳から離し、通話終了ボタンを押そうとしたけれど、スマホがなにか喋っている。
「ん?なあに?」
『ん?なあに?じゃなくて。大丈夫なの』
そう問いかけた声は呆れているようにも聞こえるし、心配してくれているようにも聞こえる。
真守はわたしのことを幼児、もしくは自由気ままな猫だと思ってるから、職をなくしたというのにいつもとそう変わりないわたしに不安を感じているのだと思う。
「真守、大丈夫だよ。なんとかなるから」
『……』
「ありがとう。真守大好き。じゃあね」
今度こそ通話を終了した。会社に背を向け、駅に向かって歩く。
わたしの人生、今までもなんとかなってきた。
だから今回も、絶対に大丈夫。
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