第5話

……と、わかってはいるけれど、この事態をひとりきりで処理することもできない。





「もしもし真守まもり?今大丈夫?あのね落ち着いて聞いてね。あ、話してもいい?いいかな、いいよね?」


『その前にゆるが落ち着け』





耳からスマホを離して、2回大袈裟に「すーはー」と深呼吸をして、それから。





「会社が倒産した!」


『は、まじ?』


「こんな冗談わたしが言うと思う?」


『ていうかゆるに起こった出来事として冗談じゃない感はある』




それはそれでどういうこと?と突っ込みたい気持ちはなくもないけれど、わかる。


わたしだってできることなら自分にとって都合のいいように考えて現実から避難したいけれど、なにしろこのわたしの身に起きたことだしな、ってことに納得して、避難所すら与えてくれないもん。




「残念ながら本当だよ」


『まじか。ついに職を失うところまできたの』


「うん。どうしてもだれかに言いたくて、リスト開いたらいちばんに真守と目が合ったから電話かけちゃった」


『だれかにって俺以外知り合いいねえじゃん』


「真守、それは失礼だよ。わたしにだって知り合いくらい……いるよ?」


『ゆるちゃん嘘はだめな?』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る