二発目『宇宙の果てまでイッテぷぅ【第一部】ネオ・カーボン・ニュートラル』
——三三三三年。
もはや宇宙は、人類の第二の
イタリア人宇宙建設作業員、マルコ・ヘッポというおっさんの、ちょっとしたお話だ。
「よぉし、あとは太陽光パネルをチェックしたら完了だ。おいスカスキー、
宇宙ステーションの外壁を点検中のマルコは、ヘルメット内部の通信機で、同僚のロシア人、スカスキーに声を飛ばす。
「了解。おいマルコお前、そんなに手が短かったか?」
「うるせぇ! 延長ストラップが思ったよりも短かかっただけだっての」
「冗談冗談。じゃあいくぜ、そらよっと!」
スカスキーは、
「ありがとう! 助かった!」
マルコはそれをしかと目視して、ステーションの外壁から、
「おっ、華麗なる跳躍!」
スカスキーはそう褒め称える。
だがそれは作業に慣れた玄人の動きであり、本来推奨される移動方法ではない。
一歩間違えば、宇宙服や構造物が損傷し、大惨事だ。
「おい! モタモタしてると、
スカスキーが、手をチョキにして、ハサミのジャスチャーをする。
「おおっとやめてくれよ? 殺すならせめて、地球の中にしてくれ」
マルコは、冗談に冗談で返す。
「よし、じゃあ地球に戻って殺し合いだ! 今からお互い
「馬鹿言え! そんなの殺し合いする前に死んじまう」
「だな! ガハハハ!」
「アッハッハッハ!」
二人は、暗黒の冷たい宇宙を背景に、ヘラヘラと笑う。
本人たちは陽気に振る舞っているが、彼らが今、死と隣合わせの危険な船外活動の最中であることには変わりない。
「そうだマルコ、単身赴任し始めて早三年。お前もそろそろ、
スカスキーが、マルコに尋ねる。
「そうだな。ああ、我が妻オナーラよ、お前は今、地球のどこで、何をしているんだ? だが、スプゥトニク・ヘコキ社との船外活動の契約は五年だ。地球への一時帰還は馬鹿みたいな金がかかるし、我慢かなぁ……」
マルコは、妻の待つ
だがその頃、地球内では……
「うちの旦那、
などと、マルコの妻が、愚痴を吐いていた。
悲しい、現実だ。
そんなことも知らずに、マルコとスカスキーは仲良く、地球にいるそれぞれの妻へと、思いを
「ま、それもそうか。周りのみんなも、我慢してるもんな、俺も、頑張るとするか……待ってろよ、
スカスキーが、しみじみとそう言った。
周りを見れば……
至る所に、男! 男!! 男!!!
宇宙開発事業に携わる男性の数は、
そのため、地球の中では男性不足に……
なっていなかった!
むしろ地球では……
地球では、男性が宇宙に駆り出されて減りだしてからというもの、男児の出生数が、女児の出生数を大きく上回るという、異常現象が起こっていた。元来出生時の男女比は、およそ一〇五対一〇〇(男性の方は女性よりもやや多い)をキープし続けていたのだが、これがなぜか、一五〇対一〇〇ほどにもなり、地球を出た男性の分だけ、男性は多く、地上で生まれたのだ!
それはなんと、『炭素10』の働きによるものだった。
一体、どういうことなのか?
「確かに男性は、一般的に女性よりも腕力が強いので、古来より、戦争に駆り出されるなどして、露骨に危険な環境に身を置くことは多かった。えー、一つ断りを入れておくと、もちろん女性にも出産時の死亡リスクなどがあったには違いないし、その事実を無視するつもりはない。で、とにかく男性は、その数をかなり大きい単位で減らすのが、常だった。これを考慮すると、男性の総人口が減ってしまうことを防ぐために男児の方が生まれやすいように人類の遺伝子がプログラムされている、と解釈するのも、ありかもしれない。しかし実際には、『炭素10』の
〈三発目『宇宙の果てまでイッテぷぅ【第二部】誤放出事故』
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