第4話 白の二章
ナッツ「まだ聞くかい?」
リコ「聞く〜!お願い!」
ナッツ「さっきの話を聞いた登山経験のあまりない男性1人が、ある霧の朝に…」
リコ「霧の日、だよねー。」
みっち「あらっ、今日も外は真っ白よ。」
リコ「知ってますけど…。」
たまサブ「それで、流れとしては…」
ナッツ「察しの通り。山小屋で待機する事になって、その日も4人。しかも…」
たまサブ「男2人、女2人?」
リコ「あのねー、流れ的にそうでしょ。」
ナッツ「そう。その組み合わせの4人。けど違ったのは天気。」
たまサブ「えっ?」
ナッツ「4人が待機して3時間くらいで窓の外は霧が薄くなってて。」
リコ「なんだ。また全員無事パターン?」
ナッツ「まっ、それがさ…。」
たまサブ「…何があったの?」
ナッツ「霧が薄くなって来たので、3人は小屋を出て山頂を目指したんだ。」
リコ「3人?4人じゃなくて?」
みっち「あらあら、聞いてなかった?話を聞いた登山経験のあまりない男性1人。」
リコ「え?もしかして、小屋で何もないからその人だけ下山したの?」
ナッツ「そう。下山した。…はずだった。」
たまサブ「はず?」
ナッツ「確かにその男は下山ルートを進んでいったらしい。」
リコ「でっ?」
ナッツ「しばらく進むと5合目標識が。」
たまサブ「5合目から下山して!?」
ナッツ「登山経験があまりないから、薄くなっても霧の中迷ったんだろう。」
リコ「って事は?」
ナッツ「そう。山小屋に戻ってきてしまったってわけ。」
リコ「……。」
ナッツ「山小屋の扉を開けると、男性1人、女性2人がいた。ただ、さっきとは全く違う3人。」
たまサブ「今日の俺と同じ状況だ。」
リコ「それってさー、たまサブく〜ん?」
たまサブ「そんなわけないじゃん!」
ナッツ「戻って来た男は訳がわからず、とりあえず霧が完全に晴れてから動く事にした。」
リコ「この3人の詳細は?」
ナッツ「それはこれから。」
みっち「戻って来た男は登山経験もなく疲れて寝てしまったのよ。」
ナッツ「ガシャーン。って音でその男は目を覚ました。」
リコ「でた。それー。」
みっち「さっきの話と違うのはまだ昼間。」
リコ「なるほど。」
ナッツ「男は小屋の中を見ると、女性が1人同じようにキョロキョロしていた。」
たまサブ「後の2人は?」
みっち「いなかったの。」
リコ「下山したんじゃ?」
みっち「リュックや帽子、雨具もそのままだったらしいから、それはないわね。」
たまサブ「じゃあ何処に?」
ナッツ「目を覚ました2人は外も白いし、まだ昼間過ぎだったので少し待機する事に。」
リコ「いなくなった2人戻って来たの?」
ナッツ「それから2時間くらい経って霧も晴れ、戻ってこない2人も心配だけど日没前に下山しないといけないので、まず2人で下山する事に。」
リコ「その2人は無事ね。」
みっち「最初に山頂に向かって行って3人も無事よ。」
たまサブ「何でわかったの?」
みっち「入山届よ。下山した2人が、いなくなった2人を調べるために見たら先に3人が早い時間に既に下山してたから。」
リコ「その3人は山頂諦めたって事?」
みっち「そういう事みたいね。」
ナッツ「いなくなった人の捜索は何の進展もないまま、また打ち切りになった。」
みっち「ただ、今回は置いてあったリュックの中から身元もわかったの。」
リコ「これって遭難事故の話?」
ナッツ「いや。違うんだ。普通の遭難とは。」
たまサブ「えっ?何が違うの?」
ナッツ「最初の話でいなくなった2人の事、覚えてる?」
リコ「身内からも捜索願い出てなかったって話ね。」
ナッツ「捜索打ち切りの少し後に身内から捜索願いが出たんだ。」
みっち「その2人がヒラメ山に向かった事も知人の話からもわかってて、山でいなくなったのは捜索願い出てる2人だって事になったのよ。」
ナッツ「ただ、今回の話で見つかったリュックの中から身分証明書も出て来て…」
リコ「……。」
みっち「そのリュックの持ち主は、1年前にいなくなった2人だったの。」
たまサブ「ん??」
ナッツ「簡単にまとめると、1年前にいなくなった2人と、今回の話でいなくなった2人は同じ2人って事。」
リコ「それって〜。」
みっち「タイムスリップ?幽霊?とにかく理屈では説明できない事。」
ナッツ「それが噂の元になった出来事。」
たまサブ「でも俺が聞いた噂は……。」
みっち「この話には後日談があるの。」
リコ「どんだけ続くんだよ〜。」
みっち「あら、怖いのかしら?」
リコ「…怖いよ〜、ほら今日だってさ〜。」
そう。
今日も男2人、女2人の4人。
その話と同じ組み合わせ。
そして…、外は更に白くなっていた。
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