第3話 白の序章

リコ「あ〜、おやつも食べたしー。」


たまサブ「あのー、話の続きを…。」


みっち「聞きたいのー?」


リコ「なーんか、意味ありげ。でも聞く!」


たまサブ「お願いします!」


ナッツ「じゃあ、続き。」


リコ「ん……うん。」


ナッツ「朝から登って2人を連れて下山した登山者達が救助要請をして、地元の山に詳しい人達も加わり捜索が開始された。」


リコ「うん、うん。」


ナッツ「かなりの人数での捜索は3日間続いたが、ある疑問があった。」


たまサブ「えっ!?疑問?」


みっち「入山届よ。」


ナッツ「先に連れて来た2人は入山届を書いてたけど、いなくなった2人は書いてなかったから。」


リコ「あっ、そうか!いなくなった人が誰かもわからないんだ。」


ナッツ「先に下山した2人からは有力な情報は得られず、誰を探してるかさえわからない状態で。」


たまサブ「身内から捜索願いとか出てなかったわけ?」


ナッツ「そう。近隣の警察を始め、どこにもそれに該当する様な捜索願いは出てなかったんだ。」


リコ「えー!?」


ナッツ「そもそも最初からそんな2人は居なかったんじゃないか?色々な災難が起こって見た幻覚なんでは?なんて言う人もチラホラ。」


みっち「それで5日目で捜索は打ち切り。」


リコ「で?どうなったの?」


みっち「それっきり。」


リコ「それっきり…か。」


たまサブ「それが奇妙な噂の始まり?」


みっち「いいえ。話はこれからよ。」


リコ「え〜!?まだ続くの?」


みっち「あら?最後まで聞きたいんじゃないのかしら?」


リコ「う、うん。もちろん。」


ナッツ「捜索打ち切りの後、壊れた山小屋の修繕が始まって、1か月後には山小屋は元に戻った。」


たまサブ「それがこの小屋?」


ナッツ「いいや、その時は古い小屋の修繕だけで建て替えはまだその後の話。」


リコ「ん〜、まだ何か話続くんでしょ?」


みっち「そうよ。まだまだ序章にすぎない。この先に起こる事のね。」


リコ「だ〜か〜らっ、みっちは雰囲気出しすぎなんだってばー!」


みっち「あらあら、それは失礼。」


たまサブ「俺が聞いてる噂って?」


ナッツ「まだまだ先の話。」


たまサブ「あっ、そうですか…。」


外はまだ白い中。


ナッツ「山小屋も元に戻って、登山客も元通り来る様になって、山にも活気が戻った。」


リコ「うん、うん。」


みっち「1年くらいはね。」


たまサブ「1年くらい?」


ナッツ「山小屋修繕から1年くらい経ったある霧の日。」


リコ「霧って!?もしや…。」


ナッツ「うん。この話の流れなら想像つくよね。早朝に登山してた人達が霧で今日と同じ様に避難してきたのさ。この小屋に。」


たまサブ「もしや同じ様に4人?」


みっち「そう。だけど今日と違うのはソロの男性4人。」


ナッツ「山小屋に避難して半日以上経った頃、天気予報は外れて暴風雨に。4人はここで夜を明かす事に。」


リコ「なんか、最初の話と同じ様な流れ。」


ナッツ「季節は秋の終わり、夜は寒いので常備してある毛布に4人はくるまった。そして夜も更けて来た頃。」


リコ「う、うん…。」


みっち「ガシャーン!」


リコ「キャー!」


みっち「ごめん、ごめん。」


リコ「何!?何ー?」


ナッツ「ガシャーンって何かが割れた音が。皆驚いてライトであちこち照らして割れた何かを必死に探す。」


たまサブ「何が割れたの?」


ナッツ「結局、何も割れてなかったんだ。」


リコ「じゃあ何だったの?」


ナッツ「わからない。怖くなった4人は寄り添って夜を明かす事に。」


みっち「パーッ!」


リコ「キャー!」


みっち「ごめん、ごめん。」


リコ「もー!さっきもだけどー。」


みっち「ごめん、ごめん。」


ナッツ「皆目が覚めて、パーッと窓からは朝日が。」


リコ「その、パーッ、ね!」


みっち「そうそう。そのとおり!」


リコ「もぉ〜。」


ナッツ「皆無事を確認して、4人で下山。」


たまサブ「全員無事だったんだ。」


みっち「うん。全員無事だった。」


ナッツ「無事に下山した4人は昨夜の出来事を皆で確認し合って、確かに4人とも間違いなく聞いた謎な音について、他の登山仲間などにも伝えた。」


リコ「口軽いな〜、その4人。」


みっち「同じ経験した人がいないかを知りたかったんじゃない?後は情報の共有的な?」


ナッツ「その話はすぐに広がって、面白半分で来る人も増えて。」


リコ「いるんだよな〜、好奇心たっぷりな人達ってさー。」


みっち「あら、あなたもこの話聞きたいなんて、好奇心たっぷりじゃないの?」


リコ「…なんも言えない…。」


たまサブ「でも、俺が知ってる噂ってなんか違う様な。」


ナッツ「そうだね。多分これから話す事が噂の元になる出来事。かな?」


リコ「…まだあるのか〜。」


みっち「あら?もしかして…」


リコ「怖くないし!聞く!聞きたいです!」


みっち「ほら、好奇心たっぷりよね。」


リコ「…悪い〜…?」


みっち「あらあら、ホントは怖いくせに。」


リコ「…なんも言えないっす…。」


時刻は朝9時になろうとしていた。

外は更に白さが増してるようだ。

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