第24話 なにも知らない日本人

 どうしてこんなことになっているのだろうか。

 朝目覚めて、布団から出ようとすると、目の前に謎の美少女がいた。

いや、少女と言っていいのだろうか。

とても若く見えるのだが、スタイルは大人なみに良いと思える。結衣さんを若干細くしたような感じだ。


「うぅ〜ん……」

「うひぃっ!?」


 女の子の声に驚いてしまった。

 もしこれがバレたら捕まる?いや、でもここは日本じゃないし……。というか、これは俺のベッドなんだから、来るほうが悪いだろ!

なんてこと言ってもどうせ意味ないんだよな……。

 そんなことを悩んでいるというのに、女の子はだんだん密着してきた。

俺を抱き枕かなんかと勘違いしてるのか?

——はぅあっ!

 い、いいいいい、いつの間にか俺の腕が胸の谷間に埋まってるし!!

これって起こしてあげたほうがいいのか?

うーん……。

 よく見てみると、ミィに似ているような気がする。だが、お姉さんがいるという話は聞いたことがない。もしかして、俺にだけ教えてくれなかった!?

 結衣さんやリリーにだけ教えていたとか!?


「あ、あのぉ……」


 返事なし。どうやらぐっすり眠っているようだ。腕を振りほどいて逃げることも出来そうなのだが、力が強すぎて抜けないんだよなぁ……。かと言って誰かに助けを求めることもできないし、これは詰んだわ。

 グッバイ、俺の異世界生活。

もし捕まったとしても、この胸の感触を糧に生きていこう——。

 よし、諦めた。二度寝しよう。


  ・  ・  ・


 再び目を覚ますと、俺の顔は胸の中だった。

予想外の出来事だが、ありがとうございます!!息苦しいけど、ありがとうございます!!


「ん〜、おはようシューヤぁ」

「だから何度も言ってるだろう、俺はシューヤじゃなくてしゅーぁだって——いや、どうして俺の名前を!?」


 それに、どうして俺はミィにするような反応をしたんだ?


「どうしてって、私ミィだよ?」


 彼女は起き上がってそう言うが、全く信じられなかった。あ、でも育ち盛りだからか?

いや、そんなはずはない!


「お前、ミィをどこにやったんだ!」

「だから、私だよぉ」

「そんなわけないだろう!ミィはもっと小さくて可愛らしい女の子なんだ!」

「今のミィ、可愛くないの……?うわぁぁぁん!」


 自分のことをミィだと言い張る女の子は泣き出してしまった。すると、何事かと部屋にリリーがやって来て、やれやれというような顔をした。


「シューヤさん、どうせ彼女のことをミィじゃないと言ったんじゃないですか?」

「そりゃあそうだろう。どこからどう見てもミィじゃないし」

「そんなことないですよ。その髪の色はとても珍しいんですから」


 そうなのか?でもどうしてこんなにも大きくなったんだろうか。


「彼女たち獣人は、とても成長が早いんですよ。だからと言ってすぐに老人になるわけではありませんが。成人程度まではすぐに育つらしいですよ」

「へぇ、そうなのか。疑ってごめんな、ミィ」

「……撫でて」

「へ?」

「許してほしかったら撫でて」

「はいはい……」


 甘えん坊なところは変わってないんだな。

相変わらずサラサラな髪だ。あとでお詫びになにか買ってあげるか。

 それにしても、異世界には変わった種族もいるものなんだなー。

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