第23話 なにも知らない独身男2

「お待たせしました!では、ロリ——娘さんのご登場です!」


 今、完璧にロリって言ったな!?

ちょっとこの店員は危ない気がするな……。

シャッと開けられたカーテンから、ミィが恥ずかしそうに出てくる。


「うぅ……ちょっとうごきづらいよぉ」

「——へ?」


 派手なフリフリの付いた黒の上下に、帽子……。これはなんと言うか…そう、魔法少女みたいだ。


「あの、もっと普通な感じのやつってないんですかね…」

「チッ、かしこまりました。すぐご用意させていただきますね!」


 おい、舌打ちされたの聞こえてたぞ。

アンタ絶対に、自分の趣味で選んでるだろ。

ミィは着せ替え人形じゃねぇんだぞ!

なんて、俺には言うことはできず、ペコペコと頭を下げながら次の服を待った。

……正直、期待はしていないが。



「お待たせしました!今度こそ、気に入ってもらえると思います!——どうぞ!」


 試着室から出てくるミィはとても嬉しそうにしていた。


「しゅーぁ、これかわいい!」


 シンプルな白のワンピースにベルトか。

うーむ。なるほど、なるほど。


「最近はこういうのが流行ってるのか——」

「もしかして、ご存知ないんですかぁ!?最近などではなく、昔からこれが一番の流行ですよ!?」


 なら最初からこれ持ってこいよ……!

店員の表情がとても頭にきたが、なんとか抑えた。


「それに、ゆったりとしているので育ち盛りのお子さんでも長く着ることができます!」

「へぇ、そういうことも気を使う必要があるんだな……」

「えぇ、ご存知なかったんですかぁ!?」


 先からなんなんだよ、コイツ……ッ!

こちとら独身だし、子どももいねぇから分からねぇよ!


「……分かった、じゃあそれを買おうかな」

「お買い上げありがとうございますぅ!」


 急に態度が変わった。

……俺が一番苦手な人種かもしれない、この人。商品を受け取り、店を出て俺は誓った。

 二度とこの店には来ないでおこう。


「しゅーぁ、ごきげんななめ?」

「いいや、そんなことないさ。さぁ、帰ろうか」


 なにか大切なことを忘れているような気もするが、ま、いいか。思い出せないほどどうでもいいことなんだろう。

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