第22話 なにも知らない独身男1

「さぁ、今日はデートですよ、シューヤさん!!」


 今朝、リリーはそう言いながら眠っている俺を叩き起こしに部屋まできた。

まだ寝かせてくれと頼んだが、そんな願いは断られ、俺は布団から引っ張り出されたのだ。

おかげでまだ眠いんだよなぁ……。

先からあくびばっかだし。

 どうやら、ミィの服を買いに行くつもりだったらしく、結衣さんを誘ったのだが二日酔いで断られたので俺にまわってきたと言うのだ。


「しゅーぁ、おようふくたのしみだね!」

「あぁ、そうだな」


 こんな小さい子に肩車する日が来るなんてな。なんだか子どもができた気分だ。

あっちの世界じゃ恋人すらいなかったからな……。


「ふふっ、ミィちゃんは本当にシューヤさんのことが好きなんですね」

「うん!みぃ、しゅーぁだいすき!きょうもいっしょにねた!」

「……一緒に寝た?それは本当なんですか、シューヤさん」


 なんだなんだ!急にリリーの表情が怖くなったぞ!


「本当だが、別に悪いことはなにもしてないぞ!」

「どうして私やサクラダさんと寝るのはダメで、ミィちゃんだけはいいんですか!」

「一応俺も立派な男なんだぞ、なにか間違いがあったらどうするんだ」

「いいんですよ。私たちはもう婚約者と言っても過言ではないほどなんですから。なにが起ころうと、それは間違いなどではなく正解なのですよ、シューヤさん。それに、過ちの一つや二つくらいは誰でも犯してしまうものなのです——」


 あ、これ以上は触れたらダメなやつだ。

完璧に自分の世界に入っちまってる……。

——お、なんだか良さげな店があるじゃないか。

 子ども連れの客が多くいる洋服屋だった。

それほど大きい店ではないが、それで十分だろう。


「ミィ、入ってみるか?」

「うん、みるみるー!」


 隣でぶつぶつ言っているリリーは放っておいて、俺たちは店の中に入っていった。

へぇ、こっちの世界の服もいろんな種類があるんだなぁ。


「娘さんのお洋服ですか?」


 店員らしき人がこちらにやってきた。

娘というわけではないが、詳しく説明するのは面倒だ。話を合わせておこう。


「はい、そうなんですよ。可愛い娘のために、いっぱい買ってやりたいと思いまして」

「しゅーぁ、みぃかわいいの?」

「あぁ、もちろんミィは可愛いぞ」

「ふふふっ、本当に可愛らしい娘さんですね。もしよろしければ、私が何着か持ってくるので、そちらをご試着されますか?」

「よろしく頼むよ。よかったな、ミィ」

「うん!」


 さて、あの店員はどんな服を持ってきてくれるのだろうか……。

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