第14話 なにも知らないふたり2

「すみません、こんなことに付き合ってもらって」

「いいのよ、私が言い出したことなんだから。けど、私の純情を弄んだことは許せないわよ?いくら二人から逃げるためだからって、ひどいわよ……」

「すみません……」


 少し困った顔をしてみせると、シューヤくんはすぐに謝ってくれた。素直で可愛らしいわね。ふふっ、なんだかいじめたくなっちゃう。


「私だってね、ちょっとは期待しちゃったのよ?こんなことは久しぶりだから、浮ついたりもしてたのよ?」

「本当に申し訳ない……」

「でも、私も大人よ。べつに責めたり、怒ったりなんかはしないわ。でも一つだけ、悪い子にはお仕置きをしてあげなきゃね」


 驚く彼に顔を近づけ、私はキスをした。

——柔らかい。男の人なのに……。

 なんだか、ものすごいことを知っちゃった気分。だんだん体が熱くなってくるのが分かった。私をこんな気にさせちゃんなんて、本当に悪い子ね……。そろそろ来るかしら。


「こらぁーっ!なんで抵抗しないのよ、修也くん!」


 物陰からサクラダさんとリリーが飛び出てきた。ふふふ、若いっていいわよね。

 十分に堪能した彼の唇を離し、胸の中に抱き寄せた。


「みんなが積極的にならないから、私が奪っちゃったのよぉ。そのままだと、シューヤくんの初めて全部貰っちゃうわよ?」


 胸の中で苦しそうにもがいてるシューヤくんも可愛いわね。離したくなくなっちゃうじゃない。


「お、お母さんっ、シューヤさんは私が結婚するんです!だから邪魔しないでください!」

「へぇ、リリーもなかなか言うようになったじゃない。でも、言葉で言うだけじゃダメなのよ?ちゃんと行動もしなきゃ」

「うぅ……」


 そうそう。反省して、これから頑張ればいいのよ。あなたはまだまだ若いんだから。


「——サクラダさん」

「ひゃいっ!?」

「あなたとシューヤくんが同じ世界で生きていたということは、ちゃんと理解しています。ですが、それだけで負けるようなウチの娘ではないですよ」

「が、がんばります……」

「それにシューヤくん、あなたはこんなにも可愛い子たちに好かれているんですから、もっとキリッとしなさい。男の子でしょ。それと、デートはちゃんと女の子をリードできるようにならないとダメですからね」


 人差し指を立てて、彼の唇に添えた。


「は、ひゃい……」

「素直でよろしい」


 若い子たちには少し悪いことをしたような気もするけれど、これくらいしないといけないわよね。

 彼の言葉を聞いた私は、席を立った。


「さてと、それじゃあ私はお買い物に行ってくるわね。サクラダさん、もしよければ今晩ウチにいらっしゃい。一緒に夕飯食べましょう」

「ぜひっ!」

「リリー、ちゃんと二人を連れてきてちょうだいね」


 ひらひらと手を振って私はその場を離れた。

 うしろから聞こえてくる、シューヤくんに事情聴取をする女の子たちの声もだんだん離れていく。


「ほんと、若いっていいわねぇ……」

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