第10話 なにも知らない美人女性1

 シューヤさんが、街を突然襲いにきた魔獣を倒してから数日が経ちました。

 ギルドから渡された莫大な報酬と称号。

 彼は報酬の半分を私にくれましたが、正直使いどころがなくて困っています。ですが、最近はそれ以上に困っていて——。


「すいませーん、シューヤさんはいらっしゃいますかー?」


 ほら、また来ちゃいました。

どこの馬の骨かもわからない人たちがシューヤさんをパーティの勧誘に来るんですよ。

家の扉を叩いて、口を開いたと思えば、シューヤさんの名前ばかり。

せめて深夜に来るのだけはやめてくださいッ!

 おかげで寝不足です。

 そんな寝ぼけ眼を擦りながらしぶしぶ扉を開ける。

 うっ、日の光が眩しくて相手の顔が全然見えないです……。


「あなたもシューヤさんの勧誘ですかー?彼はどこにも入るつもりはないって言ってるので」

「いえ、違うわ。私は彼に会いにきただけなの」

「会いに、ですか……?」


 勧誘以外で彼に会いにきたとはどういうことなのでしょうか?——もしかして、愛に来たということですか!?


「かっ、彼は私の恋人なのでお引き取りください!」


 力いっぱい扉を引いているのに全然動かない。

この人、どれだけ力が強いの!それだけシューヤさんのことを想っているということなんですか!?


「シューヤさんは、私と結婚するんですー!!」

「え?俺がどうしたって?」

「ふぇっ!?シューヤさん、起きてたんですか!」

「うん、今ね。どうしたの、また勧誘?申し訳ないけれど、俺は誰の下にもつく気はないんで」


 よく言ってくれました、シューヤさん!

寝癖で髪の毛がぼさぼさなのはちょっと締まりが悪いですけども……。

 さぁ、諦めてください、馬の骨さん!


では人の下でバリバリ働いてたのにねー」


 謎の女性はそう言いながら中に入ってきた。

はぁ、シューヤさんを守れませんでした……。

あれ?どうしてそんなにも驚いた顔をしているんですか、シューヤさん。


「ど、どうしてあなたがここに……?」

「久しぶりね、修也くん。私も、あなたと同じようにに来ちゃったのよ」


 扉を閉めてよく見てみると、そこに立っている女性はとあるギルドのリーダーだった。


「どうしてサクラダファミリアのリーダーであるあなたがここに来たんですか?」

「んー、可愛いエルフちゃんのために分かりやすく説明してあげるわね。それはね、私はこの人のフィアンセだからよ」


 え、え、え?

 驚きのあまり声も出せませんでした。

シューヤさんのフィアンセだと言う女性が、彼と同じ地球の人だなんて、勝ち目がないじゃないですか……。

 シューヤさんも顔を真っ赤にしちゃって、なにも言わないだなんて。

そんなにも再会が嬉しいですか……。

でも、リリーは諦めません!


「わ、私だってシューヤさんのフィアンセです!だって、み、み、耳まで触られたんですから!!」

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